至極のウイスキー「オールドパー」が時代を超えて愛され続ける理由とは?

「オールドパー」110年の歴史を彩る3つの物語

 今年で110周年を迎えるオールドパー。長い歴史を生きてきたオールドパーには、さまざまなエピソードや物語が刻まれています。ここでは、特に興味深い3つのストーリーを通して、オールドパーの秘密を紐解いていきましょう。

【History 01】
“オールドパー”誕生秘話

創業当時のグリーンリース・ブラザーズ社。1900年代初頭のロンドンでは馬でウイスキー樽を運搬していた
創業当時のグリーンリース・ブラザーズ社。1900年代初頭のロンドンでは馬でウイスキー樽を運搬していた

 オールドパーを飲んだことはあっても、その誕生秘話を語れる人はそう多くないのではないでしょうか。

 オールドパーは1909年、ロンドンのグリーンブラザーズ社で誕生しました。創業者のグリーンリース兄弟は、完成させたブレンデッドウイスキーに、とある有名人の名をつけました。

152歳まで生きたと言われるトーマス・パー。描いたのは「フランダースの犬」でもおなじみ、あのルーベンス
152歳まで生きたと言われるトーマス・パー。描いたのは「フランダースの犬」でもおなじみ、あのルーベンス

 その人物とは、15~17世紀にかけて、享年152歳9カ月という、イングランド史上最長寿を全うしたとされる伝説的な人物、トーマス・パー。彼の長寿は英国全土で大きな話題となり、パーは一躍、時の人となりました。そんなトーマス・パーの愛称が「オールドパー」だったのです。

 グリーンリース兄弟は、トーマス・パーの並外れた長寿をウイスキーの熟成に、そしてその叡智(えいち)をブレンド技術になぞらえました。同時に、ウイスキーに不朽の価値を与え、末永く後世に届けたいとの想いも込めたわけです。そのため、かつての「オールドパー」のラベルには、パーの生きた年 (1483─1635)と、10人の英国王の時代に生きた、という伝説が記されていました。

 ちなみに、トーマス・パーの亡骸は、ロンドンのウエストミンスター寺院の「詩人のコーナー」 に、シェイクスピアやワーズワースなどと共に眠っています。時の国王チャールズ1世は彼の逝去を嘆き、バロック派を代表する画家ルーベンスに、トーマス・パーの肖像を描かせました。今もオールドパーのボトルには、ルーベンスが描いたパーの肖像画があしらわれています。

【History 02】
オールドパーのボトルのひび割れ模様の秘密

陶器ボトルをイメージした独特のひび割れ模様「クラックルパターン」
陶器ボトルをイメージした独特のひび割れ模様「クラックルパターン」

 オールドパーのボトルを眺めたことのある人なら、表面にあしらわれた特徴的なひび割れ模様を覚えている人も多いのでは? これは「クラックルパターン」といわれるもので、ガラスのボトル以前に主流だった陶製のボトルをイメージしているんです。
 創業当時から変わらない四角く丸みを帯びたボトルの形状と、「オールドパー」のトレードマークである「クラックルパターン」の感触。伝統を尊重し、継承し続ける、オールドパーの精神が、このひび割れ模様からも伝わってきます。

【History 03】
オールドパーが日本で愛される理由とは?

オールドパーのボトルを斜めに傾けても立つのをご存知でしたか?
オールドパーのボトルを斜めに傾けても立つのをご存知でしたか?

 オールドパーが日本に紹介されたのは明治時代。以来、「オールドパー」は今に至るまで日本の歴史と共にありました。

 かつては昭和の名宰相・吉田茂や、作家・ 池波正太郎など一流好みの名士たちが愛飲するなど、「オールドパー」はまさにニッポンの男たちの憧れであり、ステータスシンボルでもあったわけです。
 そして何より、斜めに傾けても自立する独特のボトルのカタチ。磨き抜かれた深い味わいはもちろん、「右肩上がり」「決して倒れない」といったイメー ジを喚起させるこのスタイルもまた、 日本人に選ばれてきた理由の一つと言えるでしょう。