プロのシェフが通う23時過ぎの“リアル深夜食堂”!西麻布『ふるめん』のひと味違う中華とは?

昼と夜で顔を変える高級店顔負けの味わい

「こぶみかんの葉麻婆豆腐」1200円。ごはんではなく、お酒に合う味
「こぶみかんの葉麻婆豆腐」1200円。ごはんではなく、お酒に合う味

 ビル改修の為、この春、オーナーシェフとして10年間腕をふるった西麻布『麻布長江 香福筵』を惜しまれつつ閉めた田村亮介さん。新たな活躍の場を青山に決め、現在は、開店準備に追われる毎日だとか。その田村シェフが、西麻布時代からよく足を運んでいるのがここ『ふるめん』です。

『ふるめん』料理長の濱田克博さん(左)と、こちらに足しげく通う田村シェフ(右)
『ふるめん』料理長の濱田克博さん(左)と、こちらに足しげく通う田村シェフ(右)

 西麻布の創作和食店『ふるけん』が、3年前に始めたラーメン店…と思ったら、さにあらず。ラーメン店は昼の顔。夜ともなれば、ラーメンや餃子(皮から自家製)のみならず、「地鶏のパリパリ揚げ香港スタイル」や「蝦夷鮑のオイスターソース煮込み」などなど高級店顔負けの逸品料理がメニューをズラリと飾ります。

夜の予算は呑んで食べて5000円程度
夜の予算は呑んで食べて5000円程度

「深夜でこれだけクオリティの高い料理を食べられるお店はそうそうないと思いますよ。ここで必ず頼む蒸し鶏にしても、凄くしっとりしていているんです。どうしたらこんなに柔らかく仕上がるのか、聞いてみたいぐらいですよ」(田村シェフ・以下同)

「匠の技大山鶏 葱生姜ソース」1000円
「匠の技大山鶏 葱生姜ソース」1000円

 冗談混じりにそう言いながら、料理長の濱田克博さんと歓談する田村シェフ。いつもは、スタッフや友人達と訪れることが多いそうです。田村シェフが更に言葉を続けます。

「『ふるけん』の古川弘英さんとは学生時代からの友人で、独立したのも同じ頃、といわば戦友みたいな仲。この店も開店当初から、たまに来てはいたのですが、濱田さんが料理長になった半年ぐらい前から、メニューが半端なく充実しましたね」

「広東料理がベースのせいか、深夜に行く中華としてはあっさりしているところも良いですね」とは田村シェフ。週に2回来ることもあるそう
「広東料理がベースのせいか、深夜に行く中華としてはあっさりしているところも良いですね」とは田村シェフ。週に2回来ることもあるそう

 それもそのはずで、濱田料理長は、『赤坂璃宮』やホテルパシフィック『桜蘭』等の名店で修業。銀座の完全予約制のフカヒレ専門店では料理長を務めたほどの経歴の持ち主なんです。田村シェフ垂涎の”匠の大山鶏葱生姜ソース“も、茹で方に濱田流のひと工夫が。丸鶏を骨つきのまま沸騰した湯に入れて火を止め、余熱でじんわりと火を入れるのですが、その時間と温度のタイミングがキモ。熟練のカンが、ともすればパサつきやすい鶏胸肉を、柔らかくきめ細やな食感に仕上げています。

「紋甲イカとレタスのサッと湯引き 魚醤ソース」1400円。熱い油をかけて仕上げる
「紋甲イカとレタスのサッと湯引き 魚醤ソース」1400円。熱い油をかけて仕上げる

 その他「豚レバーとニラの炒め」や「自家製焼売」といったオーソドックスな町場中華のメニューもきちんと抑える振り幅の広さもこの店の魅力の1つです。中には、麻婆豆腐にコブミカンの葉を刻んで加えたオリジナルの一皿もあり、これには麻婆豆腐好きの田村シェフも脱帽。辛さや痺れと共に口中に広がるこぶみかんの葉特有の爽やかな香りについ箸が進むこと請けあいです。

 もちろん、ラーメンは夜も健在。おすすめは煮干し醤油ラーメンで化学調味料は不使用。豚肩ロースと大山鶏のガラを4時間半煮込んでとるスープをベースに、伊吹島産煮干しや真昆布、岩手県産エゴマ醤油などナチュラルな拘りの調味料を用いた自信作です。

(文◎森脇慶子 撮影◎上田佳代子)

●SHOP INFO

ふるめん 店内

店名:ふるめん

住:東京都港区六本木3-4-31 六本木レジデンシーズ 1F
TEL:03-3585-1616
営:11:30~15:30(LO)、18:00~翌3:00(LO)、土曜、祝日11:30~15:30(LO)、18:00~22:30(LO)
休:日曜

●プロフィール

紹介人/田村亮介

専門学校卒業後、数店を経て『麻布長江』に。当時オーナーシェフだった長坂松夫氏のもとで10年修業。2009年に引き継いだ『麻布長江香福』を閉め、今年11月新店がオープンする予定。

※当記事は『食楽』2019年秋号の記事を再構成したものです