豪華な花見弁当に舌鼓! 「江戸ワンダーランド日光江戸村」で江戸料理を食べてきた

江戸時代の花見弁当ってどんなの? 「江戸ワンダーランド日光江戸村」で食べてきた
食楽web

 情緒溢れる堀端で、三味線と端唄の美しい調べに聞き惚れながら桜を愛でる…。そんな風流なお江戸の花見で、やはり欠かせなかったのが一献傾けながらの花見弁当。舌の肥えた江戸っ子たちは、一体何を好んで食べていたのでしょう?

船着き場の桜の下、端唄に手拍子を打ちながら花見弁当を楽しむ子どもたち
船着き場の桜の下、端唄に手拍子を打ちながら花見弁当を楽しむ子どもたち

 そうした「食」の今昔に思いを馳せつつ、江戸時代さながらの花見が体験できるイベントが「江戸ワンダーランド日光江戸村」で開催されました。その名も「EDO WONDERLAND 歳時記 春の宴 ~江戸の花見~」。施設内で提供される江戸料理に磨きをかけたいという、代表取締役ユキ・リョウイチさんの思いから始まった企画です。昨年春から江戸料理に精通する料理研究家の冬木れいさんとタッグを組み、四季折々の江戸料理を考案。素材そのものの生命力が感じられるシンプルな味わい、“今にはない”と“今も鉄板”の両側面を併せ持った味覚が、老若男女を問わず人気を博してきました。

NHK-BSドラマ「幕末グルメ ブシメシ!」で料理監修をしていた冬木れいさん(右)に声をかけたのがユキ・リョウイチさん(左)
NHK-BSドラマ「幕末グルメ ブシメシ!」で料理監修をしていた冬木れいさん(右)に声をかけたのがユキ・リョウイチさん(左)

 それぞれの料理の江戸にまつわるエピソードも小粋でウィットに富んでいます。たとえば「花見弁当」に登場する蛸の桜煮と小芋揚げ。江戸時代、井原西鶴の浮世草子の一節に「とかく女の好むもの 芝居 浄瑠璃 芋蛸南京」と書かれていた蛸と芋。それに加えて、“蛸が陸に上がり畑で芋を掘って食べる”という伝説が日本各地に残っていることから取り入れた、遊び心ある組み合わせです。柔らかく煮付けられた桜色の蛸は、女性はもちろん、江戸っ子に好まれた料理の代表格だそう。

 また、お弁当仕様に冷めても美味しいことを念頭に作られた玉子焼きは、どこまで出汁と甘味を効かせるかに腐心した逸品。しかし、当時鶏は時を告げるもので食用ではなかったため、卵はかなりの高級品でした。まさに庶民にとっては憧れの弁当と言える内容になっています。

旬の食材を活かした、色鮮やかな「八重桜膳」。お値段は2,000両!(現代の価値で一両=約13万円)
旬の食材を活かした、色鮮やかな「八重桜膳」。お値段は2,000両!

 期間限定の特別店『竈屋(かまどや)』で提供された「八重桜膳」も、緻密なアイデア満載の豪華御膳。伝統野菜である早稲田茗荷竹、のらぼう菜、しんとり菜のほか、江戸っ子好物の初鰹やかつては隅田川でもよく獲れたという高級魚、白魚のかき揚げなど、江戸ゆかりの食材のオンパレードです。

 なかでも冬木さんを始め、「江戸ワンダーランド」のスタッフが注力してきたのが特製ぬか床。“何でも漬けられるのが魅力”とのことで、夏にはハタハタや枝豆も漬けたのだとか。今回の長芋、蒟蒻のぬか漬けはとても歯ごたえ良く、素材の旨さが際立つ滋味深い味わい。漬物は苦手という若者からも大好評だったそうです。

 そして、牛肉を味噌漬けにした反本丸(へんぽんがん)の串。これは肉食が禁忌とされていた江戸時代、唯一牛肉の生産を公認されていた彦根藩から幕府に献上されていた料理です。味噌漬けはまろやかかつ、上品な味わいで、共に供される獅子唐がいいアクセントになっています。

 ちなみに、施設内には「山くじら」という屋台が。その名は、タブーとされていた肉をこっそり提供するために生まれた猪肉の隠語が由来で、江戸の人々の洒落っ気が伺える逸話です。ここでは焼き鳥や各種丼をいただくことができます。

「山くじら」からは威勢のいい掛け声が。目抜き通り一帯が焼き鳥の香ばしい匂いに包まれます
「山くじら」からは威勢のいい掛け声が。目抜き通り一帯が焼き鳥の香ばしい匂いに包まれます
特別店『竈屋』の屋台で振る舞われたあられ豆腐。絹豆腐使用で、中はしっとり、外はかりかり
特別店『竈屋』の屋台で振る舞われたあられ豆腐。絹豆腐使用で、中はしっとり、外はかりかり

「とにかく収まりのいい、お定まりの仕上がりにはしたくなかった」と語る冬木さん。実際にどの料理も、江戸のエッセンスが詰まった勢いあるものばかりでした。変幻自在、自由闊達なレパートリーはまさに江戸の精神そのもの。「江戸ワンダーランド」では今後も定期的に「歳時記」のイベントを開催していくほか、近い将来には堀沿いのエリア一帯をハーバーカフェのような空間にして飲食店を集結させるそう。いずれ江戸の食文化発信地の大本丸となる日も近いかもしれません。

ユキ・リョウイチさん自ら開発に携わったこだわりの「オリジナル煎り酒」。施設内「奈美路や」で販売しています
ユキ・リョウイチさん自ら開発に携わったこだわりの「オリジナル煎り酒」。施設内「奈美路や」で販売しています

●DATA

江戸ワンダーランド日光江戸村内

住:栃木県日光市柄倉470-2
http://edowonderland.net/