ラーメン激戦区・蒲田『あかずきん』の「麻婆麺」&「生姜そば」が旨い|田中一明のラーメン官僚主義!

ラーメン激戦区蒲田に誕生した『あかずきん』の辛ウマ絶品「麻婆麺」&「生姜そば」とは?
食楽web

激戦区蒲田にスパイシー系の精鋭が降臨!
「麻婆麺」&「生姜そば」、盤石の二頭馬車態勢で覇を窺う

 東京都城南地区を代表するラーメン激戦区のひとつ、大田区蒲田。各線蒲田駅の周辺には『煮干しつけ麺宮元』『らーめん飛粋』『狐狸丸』など、錚々たる実力店が軒を連ねる。

 本年10月27日、そんな蒲田の地に1軒のラーメン店が新たにオープンした。それが、今回ご紹介する『辛っとろ麻婆麺あかずきん蒲田店』だ。世田谷区砧(最寄駅:小田急祖師ヶ谷大蔵駅)の人気店『辛っとろ麻婆麺あかずきん』の2号店。さらに遡れば『あかずきん』は『麺処鳴声@西馬込』(※)の別ブランドなので、幾星霜の歳月を経て、創業の地である大田区に2軒目の店舗を構えたことになる。「故郷に錦を飾る」ではないが、何とも慶ばしい話だ。

「辛っとろ麻婆麺」850円
「辛っとろ麻婆麺」850円

 こちらの『あかずきん蒲田店』で手掛けるのは、砧の1号店において看板メニューとして君臨する「辛っとろ麻婆麺」とそのバリエーション(「背脂カレー麻婆麺」「パクチー辛っとろ麻婆麺」)。加えて、蒲田店オリジナルメニューとして新作「真鱈(まだら)のとろみ生姜そば」を展開。新店をオープンするに当たり、既存メニューだけでなく新メニューをしっかりと用意する点が、同店の地力の高さを物語る。

辛さは0.5辛~5辛まで選択可能。3辛までは無料、4辛以上から+50円
辛さは0.5辛~5辛まで選択可能。3辛までは無料、4辛以上から+50円

 もちろん「辛っとろ麻婆麺」「生姜そば」ともに、その内容はギミックの極致。
「麻婆麺」は、赤味噌をベースとしたタレに、タレとの相性を徹底的に吟味し選り抜いた甜麺醤・豆板醤をブレンド。それに、滋味豊かな昆布・鰹節と鶏ガラを丁寧に炊き込んだ出汁を絶妙なバランスで折り重ねることで、大樹の幹のように泰然自若としたうま味を構築。辛みパートの主役を司るラー油にも抜かりは一切ない。本場・中国四川から取り寄せた花山椒を主軸に、香り華やかな八角・桂皮・陳皮等のスパイスを紡ぎ合わせた自家製。これらのうま味と辛みが寸分の破綻もなく一と化し、食べ手の頬を緩ませる。

店主の小石さん
店主の小石さん

「それだけではありません。食べ進めていくと麻婆餡のトロミは緩みます。それは唾液に含まれる酵素(アミラーゼ)の作用によるものなんですが、そういう変化も織り込んだ上で開発したのが、この麻婆麺です」と笑う小石店主。食べ始めはうま味が先行し、餡が緩むにつれて徐々に辛みが立ち上がる。後半はうま味と辛みの双方が華麗な協奏曲を演じ、圧巻のフィナーレ。狙い澄ました構成には「お見事」と感服するほかない。

「生姜そば」790円
「生姜そば」790円

「生姜そば」は、真鱈をはじめ、昆布・生姜・鶏節・香味野菜等から採った出汁に、生姜・ニンニクを溶け込ませたネギ油を合わせる。出汁と油の双方に生姜を配し、食味の一体感を演出する手法は、まさにラーメンづくりの理に叶ったもの。白身魚の繊細な風味を損なわぬよう、過度に主張せず存分にスープを持ち上げる「稲庭中華めん」を採用するなど、同メニューだけで新たに1軒店を出してもおかしくない程の出来映えだ。

 あまりのクオリティの高さに、思わず「麻婆麺」と「生姜そば」を立て続けに食してしまった。断言しよう。この内容であれば、激戦区蒲田でも八面六臂の活躍が期待できるに違いない。

・・・・・・・

(※)『麺処鳴声』とは
2012年11月、大田区西馬込にオープン。店主・小石氏は、2011年に開催された『立川アレアレア』の『第9回ラーメントライアウト』で優勝するなど、腕の良さに定評あり。とりわけ、担々麺、麻婆麺等の辛系ラーメンの創作手腕については、都内の作り手の中でも有数の実力を誇る。

●SHOP INFO

辛っとろ麻婆麺あかずきん蒲田店(からっとろまーぼめんあかずきん) 外観

店名:辛っとろ麻婆麺あかずきん蒲田店(からっとろまーぼめんあかずきん)

住:東京都大田区西蒲田7-5-3 かわりやビル1F
TEL:03-6424-4155
営:11:00~23:00
休:なし

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。