荒木町の和食の名店『宮わき』の、空間造りから始まる心尽くしのおもてなしとは?

空間、酒、おもてなし。随所に光る『宮わき』のこだわり

「蕪蒸し」1,500円
「蕪蒸し」1,500円

 正統派京料理の伝統を守りつつ、既成概念にとらわれない発想を取り入れるのも「直感的に美味しいもの」を目指す宮脇さんの持ち味。この日に登場した料理にも、そんな思いは顕著でした。

 まず一品目の「蕪蒸し」は、非常に古典的な日本料理。百合根、穴子、甘鯛に蕪をのせて蒸しあげ、餡を張るという製法で、宮脇さんも「今では珍しいほどのスタンダードな作り方」と語ります。これは宮脇さんの師匠が古い仕事にこだわる料理人であり、宮脇さん自身にも深く根付く“古典的な料理への敬意”の象徴でもあります。

 そうかと思えば2品目には「白子のグラタン」が供されました。聖護院大根と白子に、裏ごしした白子のソースを合わせ、チーズを入れて焼き上げる一品。ただし白子ソースは出汁でのばしているため、その味わいも伝統的な和の範疇に着地しています。

 最後の一品も意表を突く「かつべ牛のカツレツ」。パン粉をつけて揚げた牛肉を、ウスターソースで味わうこの料理。細かいパン粉と赤身の旨みを感じる肉質により、さっぱりと味わえる仕上がりになっています。

「かつべ牛のビフカツ」2,000円
「かつべ牛のビフカツ」2,000円
「白子のグラタン」1,500円
「白子のグラタン」1,500円

 仕込みや仕入れの手間を押してもなお、アラカルトにこだわる宮脇さん。それだけに一品一品にかける思いはひとしおです。

 そして既成概念を飛び越えはするものの、宮脇さんの料理はあくまでも日本料理。包丁の入れ方や出汁といった和食の基本が確立されているため、味にブレがなく体に染み入るような美味しさが堪能できるのです。宮脇さん自らが毎日市場に出向いて厳選する魚介をはじめ、味の根幹を成す食材選びにもこだわりが光ります。

 定番の日本酒は冷が「澤屋まつもと 守破離」、燗酒が「丹沢山」の純米と、「月桂冠」の本醸造。それぞれ、どんな料理にも合わせやすい万能の酒です。定番以外のラインナップは常時8種類ほど。こちらは一升瓶1本ずつしか仕入れないため、季節酒や限定酒なども含めて一期一会の出合いが楽しめます。

 扉を開けると目の前に伸びる、凛とした白木のカウンター。カウンターは「アラカルト主体のため、話しながら料理を決めて頂きたい」という宮脇さんがもっともこだわった設えのひとつ。スタッフの会話を楽しみ、料理人の仕事を眺めながら、上質なひとときが過ごせるはず。店奥には商談にも利用できるテーブル席も準備されています。