現役トレーナーに聞く筋肉メシ! 飲んだ後の「〆のラーメン」はなぜダメなのか?

夜中にラーメンを食べると、太りやすい理由は?

 この連載の第2回で「インスリン」についてお話しました。もう一度、復習しておきましょう。

 スイーツなどの「糖質」が多いものを食べた時に、すぐに体内に分泌されるホルモンがインスリンです。インスリンは、血中に入った糖質(血糖)を回収しに行き、身体の隅々の細胞に素早く運んで同化させる働きがあります。その働き方は非常に優秀で、超ハイテク掃除機のごとく、ぐんぐん血糖を吸い取って、体の細胞に回していきます。

運動後30分以内にタンパク質と糖質を摂ることが筋肉再生のカギ
運動後30分以内にタンパク質と糖質を摂ることが筋肉再生のカギ

「タンパク質」を摂った時に「糖質」も一緒に摂ると、インスリンが登場し、血中の糖質だけでなくタンパク質も一緒に体の細胞にどんどん同化してくれます。そこで、筋トレの30分後に、タンパク質と糖質(単糖類)を摂れば、筋肉の再生効率がよくなることは前回お話した通りです。

スーパーホルモンの登場!

 ここで、もう1つのホルモンについてご紹介します。それは皆さんも一度は聞いたことがあるはずの「成長ホルモン」です。

 “成長”という名前が付いていますが、人間が生涯通じて分泌し続けるホルモンです。思春期に一番多く分泌されるため、身長がグングン伸びます。つまり、成長ホルモンは、骨や筋肉を発達させ、細胞の新陳代謝を促して体を発育させるのが役割です。

 思春期を終えて30歳頃までにその分泌量は急降下し、その後も少しずつ減り続けます。しかし、年代によって分泌量は違っても、成長ホルモンの働きは死ぬまで変わらず、骨や筋肉を作り、細胞の代謝を促してくれるのです。

「成長ホルモン」の役割の中で、新陳代謝の促進について、もう少しお話しすると、有名なのが肌や爪、髪などの細胞の生まれ変わりを助けてくれること。若々しい見た目には欠かせないということです。

 さらに、成長ホルモンには、“太りにくい体にする”重要な働きがあります。それは、

1.タンパク質の合成(肉や魚を摂取した際、筋肉をはじめあらゆる細胞作りを促す)

2.血糖の調整(糖代謝を促し糖質を体に残さないようにする)

3.脂質の分解(脂肪をエネルギーに変える)

 すごいでしょ。若い頃、太りにくく痩せやすかった理由は、この「成長ホルモン」のおかげなんです。成長ホルモンは、ダイエットのアシストをする「サウナスーツ」のよう。まさにスーパーホルモンですね。

深夜のラーメンと成長ホルモンとの関係

 さて、いよいよ本題の〆のラーメンが悪い理由です。
 先ほどの「インスリン」と「成長ホルモン」という2つのホルモンですが、実はものすごく仲が悪いんです。とくに成長ホルモンはインスリンが大嫌い。インスリンがいたら会いたくないので雲隠れします。

 ちなみに成長ホルモンが分泌されるピークは夜中。しかも睡眠中に勢いよく現れるように仕組まれています。つまり、人は寝ている間に骨や筋肉の発達、および、新陳代謝の促進が行われるということ。また、繰り返しますが、成長ホルモンというスーパーホルモンが“サウナスーツ”のような働きをして、寝ている間に太りにくい体にしてくれるんです。

 このせっかくのゴールデンタイム(就寝時間)の前に、糖質たっぷりなラーメンを摂るとインスリンがバンバン分泌されます。すると、成長ホルモンは「冗談じゃない」といって、顔を出しません。つまり成長ホルモンの分泌が阻害されてしまうんです。

 1日の中でも、最も肌や髪が美しくなり、体脂肪も燃焼する時間なのに、酔った勢いで食べたラーメン一杯で、すべて台なしに! なおかつ、寝ていて動かないため活動エネルギーの消費も極端に少なくなります。つまりラーメンで摂ったカロリー(脂質・糖質)は、内臓脂肪に直行。

 もう、「恐ろしい」としか言いようがないですよね?

 ちなみに、ラーメンだけではありません。寝酒、深夜の飲酒、チーズ、ナッツなどの軽いおつまみもすべて同じです。お酒は糖質たっぷり、チーズやナッツは脂質たっぷり。ラーメンと同じなんです。

ワイン&チーズもトータルすると、糖質、脂質の組み合わせで、ラーメンと変わりません
ワイン&チーズもトータルすると、糖質、脂質の組み合わせで、ラーメンと変わりません

 というわけで、肌や髪、爪、骨、筋肉といった若々しさに直結する見た目を重視し、しかも太りたくなければ、就寝直前の〆のラーメンはもとより、寝る前の食事は怖くて食べられないはず。だからラーメンをはじめ夕食を摂るのは睡眠の3時間前にしておくといいでしょう。

 最後に、夜の寝ている間だけでなく、他の時間でも成長ホルモンを出したいという人は、筋トレをしましょう。とくに強度の高い運動を行うと、運動中から成長ホルモンの分泌がピークに高まるという研究結果があります。

 具体的には最大筋力の60%以上(キツイと思う程度)で10回から15回行うような筋力トレーニングです。「筋肉痛になりそう」と思う程度が最適です。ちなみに、ランニングのような有酸素運動でも成長ホルモンは分泌されますが、その場合はかなり高強度、ハイスピードで行う必要があります。

 多くの方にとって、筋トレの方が遥かに効率的で心理的に楽に取り組めるでしょう。

 とにもかくにも、〆のラーメンには細心のご注意を。といっても酔っぱらったら自覚もなくなってしまうと思うので、そもそも飲みすぎにご注意を…。

(取材・文◎土原亜子)

●お話を聞いた方

宮本健太郎

宮本健太郎

『エベレストフィットネス』代表。日本体育大学卒 第一種高等学校教諭(保健体育)。全米ストレングス&コンディショニングスペシャリスト。NSCA認定パーソナルトレーナー。大学生時代よりプロボクシングでの競技生活をスタート。競技引退後は某有名ボクシングジムのチーフトレーナーとして後進の育成に従事し、2011年から2018年3月までこの職を勤めトレーナーとしてのスキルを磨く。今季夏より独立し、ボクシング&フィットネスのジム『エベレストフィットネス東高円寺』を経営。
https://everest-fitness.jp