旨い店はタクシー運転手に訊け! 塩ラーメンの最高峰、埼玉・新座市『ぜんや』に19年間、行列ができ続ける理由

研究熱心な元・公務員の店主

塩ラーメンでよく使われる細麺ではなく、中太の縮れ麺を使う理由は、豚ガラでとる強いスープに負けず、麺自体も楽しむことができるから
塩ラーメンでよく使われる細麺ではなく、中太の縮れ麺を使う理由は、豚ガラでとる強いスープに負けず、麺自体も楽しむことができるから

「豚ガラスープ×塩」の難しい組み合わせ

『ぜんや』がオープンしたのは19年前の1999年。ご主人の飯倉洋孝さんは、元・経済産業省(当時の通産省)の職員でしたが、国家公務員としてのキャリアを捨て、ラーメン界に入った面白い方なんですよ。

「開店当初は、醤油や味噌、豚骨はあっても、塩ラーメン専門店はほとんどなかったんです。何も知らないものですから、塩なら簡単そうだなと、ラーメン修業もせずに独学で始めたのです。が、案の定、とても難しかった」と笑います。

ご主人の飯倉洋孝さん
ご主人の飯倉洋孝さん

「最初は鶏ガラでとろうとしていたスープですが、どうも思ったようなコクが出ない。そこで豚ガラでとると、今度はちょっとキツくて食べにくい。目指していたのは、毎日食べられるラーメンだったので、コクがありつつさっぱり感を追求した結果、ダブルスープに行きつきました」と飯倉さん。

 今は、豚ガラを弱火でゆっくり、じっくり煮込んで透明なスープをとり、そこに、別鍋で濃い目にとった昆布出汁を合わせているそうです。肝心の塩は、様々な塩を取り寄せて試した結果、甘味とコクが特徴の中国福建省産の自然海塩にたどり着いたと言います。

「オープンして1カ月ぐらいして、TVに出る機会があり、その後もいろんなメディアにご紹介していただき行列していただけるようになりました。一過性の人気だろうと思っていたのですが、おかげさまで、何年間もこんな辺鄙なところまで来て並んでいただいているんです。本当にありがたいことです」

 ご主人の穏やかな人柄と同じ、優しい味の塩ラーメン。ぜひ食べに行ってみてください。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

ぜんや 看板

店名:ぜんや

住:埼玉県新座市野火止4-10-5
TEL:048-479-6664
営:11:30~スープがなくなり次第終了
休:火・水

●プロフィール

荒川治

東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。写真検索で美味しそうなモノを選び、食べに行って気に入ればとことん通い倒す。でもじつは、自分で料理を作ることも好きで、かなりの腕と評判。