南魚沼の旅館から蒲田の酒処にたどりついたかっぱの話。【酒器も肴のうち】

お酒をつぐ器、お酒を飲む器。酒器に思いを巡らせると、気になってくるあの人のお気に入りや、あのお店のセレクション。酒器を愛でながら一献傾けるのが好きなライターによる酒器折々、酒器こもごも。『酒器も肴のうち』第48献。

南魚沼の旅館から蒲田の酒処にたどりついたかっぱの話。【酒器も肴のうち】
食楽web

 女将のお気に入りだというお猪口を見るやいなや、無意識のうちにあのフレーズを口ずさんでいた。てっきりあのお酒と何か関係があるのかと思っていたら、どうやらそうではないらしい。

 関係ないと言われても頭の中ではずっと「かっぱっぱ~、るっぱっぱ~」のリフレインである。

 東京・蒲田にある「ささめ」は日本酒と共に料亭の味が楽しめるお店。女将の山田ひかるさんが気に入っているというお猪口にはかっぱとひょうたん徳利が描かれている。もともとは店主である山田嘉人さんのご実家にあったものだという。

「主人の実家はかつて新潟・南魚沼で旅館業を営んでいて、その頃に使っていたものだそうです。よく見ると微妙に表情が違うんです。レトロな雰囲気とどことなく粋な感じもあって妙に惹かれるんですよね。

 主人が板前修行を経て独立してお店を始めるというタイミングだったと思いますが、使うなら持ってっていいわよと言って義母さんが譲ってくれたものです」。仕込み中の店主・山田嘉人さんも「それ、好きだよね」とニコニコしながら穏やかに頷いている。

 コシヒカリの田んぼに囲まれた旅館で使われていたかっぱのお猪口は女将だけでなく、お店を訪れるお客さまにも可愛がられている。南魚沼のかっぱが蒲田で第二の人生を謳歌しているようだ。そんなことを思いながら筆者の頭の中ではまだあのフレーズが鳴り止まないのだった。

 ちなみに、かっぱのお猪口は南魚沼産の2個と、それとは別にもう1個存在する。顔がどことなく似ているがまったく別ものだ。こちらはたまたまご主人が見つけて購入したもので、これはもしかすると正真正銘の「るっぱっぱ」系ではないかと思うのだが、ご存知の方がいたら鑑定団として登場願いたい。

 ぐい飲み、お猪口の類いは主に燗酒のときにかご盛りで登場し、お好みを選べるスタイル。冷酒はお二人が自宅でも愛用しているという脚なしのワイングラスで供する。

 お店で扱う日本酒は生酒のみ。生酒の魅力については三軒茶屋にある日本酒の名店で培った知識豊富な女将に託すとして、それよりなによりあれこれ注文したくなる悩ましいメニューの数々を眺めて時間が過ぎていくのだった。「ささめ」の酒器のおかわりは次回につづく。

●DATA

ささめ

住:東京都大田区西蒲田7-61-8
TEL:03-6331-4003
営:17:00~23:00(日15:00~21:00)
休:月

●NEWS

蒲田 de はしご酒 2018

6月24日(日)に開催される大田区蒲田東口・西口の有志飲食店による日本酒飲み歩きイベント。こだわりの日本酒が揃い、日本酒好きが通う人気店ではしご酒が楽しめる。各店舗には蔵元も参加する。フリードリンク&フリーフード制チケット(前売5,000円、当日6,000円)は絶賛発売中。一部店舗、別途キャッシュオンフードあり。参加蔵元、参加店舗、チケット入手方法など詳細はFacebookでご確認を。

●著者プロフィール

取材・文/笹森ゆうみ

ライター。蕎麦が好きで蕎麦屋に通っているうちに日本酒に目覚め、同時にそば猪口と酒器の魅力にとりつかれる。お酒、茶道、着物、手仕事、現代アートなど、趣味と暮らしに特化したコンテンツを得意とする。