旨い店はタクシー運転手に訊け! 餡がぎゅうぎゅう詰めの絶品餃子店『南湖』

「騙しものをやれない」というご主人に感動

『南湖』さんは7年前の3月8日に開店しました。東日本大震災の3日前のことだったそうです。実は、ご主人の黒田さんは、福島県白河のご出身で、餃子屋をやる前は、東京・中野で17年間、『白河ラーメン 南湖』というラーメン屋をやっていたんです。そう、元ラーメン店主なんです。しかもかなりの人気のラーメン店でした。しかし、60歳を機にそこを閉め、1年後に江古田に餃子屋を出したら、またまた大人気になっちゃったというわけ。やはりすごい人は何をやってもすごいんです。

 聞けば、黒田さんは若い頃、福島県・白河の超人気店『英(はなぶさ)』で修行をしたそうです。そこでラーメンと餃子の基礎を学んだと言います。

「中野でも、修業先同様に昔ながらの作り方でやってたんで、でっかい寸胴でスープ炊いて、カエシもチャーシューも手作りで仕込んで、1日15時間くらい働いていましたね。若いから無我夢中で出来たんでしょうね。ラーメン屋は体力勝負ってところがあるから、自分で定年決めなきゃと思って、ぴしっと60歳で辞めたんです。でも、何もやらないとボケるでしょ(笑)。そこで1年後に、少し肩の力抜いてできる餃子屋を開くことにしたんです」って言ってました。

 だけど、「でもさ、やっぱり身についているのか、騙しもんはやれないし、結局、本物志向になっちゃって、皮はこうしたい、餡に使う野菜はこうしたいって、なっていくんだよね。本当は忙しくなくていいのにさ」って言ってました。そんな親父さんの言葉を聞いて、やっぱりなって思いました。仕事を丁寧にする人の料理は、食べると舌が安心するんです。

「何十年も餃子作ってるけど、これがなかなか同じのはできない。1番難しいのはキャベツだね。季節によって違うから、水分を絞ること1つとっても難しいんですよ」って。そうやって、日々変わる食材にも向き合い、真剣に取り組んでいる親父さんの餃子の味、絶対に感動すると思います。ぜひ、食べてみてください。パワーをもらえると思います。

(構成◎土原亜子)

●SHOP INFO

南湖

店名:南湖

住:東京都練馬区小竹町1-55-6
TEL:03-3959-5921
営:17:00~23:00LO
休:水、第2・3木

●プロフィール

荒川治

東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。写真検索で美味しそうなモノを選び、食べに行って気に入ればとことん通い倒す。でもじつは、自分で料理を作ることも好きで、かなりの腕と評判。