
●蕎麦もお酒も大好きなホフディランの小宮山雄飛さんが、美味しいお蕎麦屋さん、そして蕎麦屋呑みの魅力を伝える連載。第4回は、季節の野菜料理が充実し、ミシュランも獲得している西麻布の名店『蕎麦たじま』です。
家が比較的近いのもあり、よく利用させてもらっている、『蕎麦たじま』。
しかし、僕はこちらの常連ではありません。
たじまの常連なのは、うちの父。
僕はいつも、蕎麦好きの父に連れられてこちらのお店に来ているので、正確に言うのなら「常連さんのお子さん」という立ち位置(笑)

蕎麦呑みというと、週末や休日の昼が多いですが、こちらのお店は圧倒的に夜がおすすめ。 なぜなら、実に魅力的なプリフィックスのコースがあるから。
4600円のコースで
・野菜小鉢より 三品
・野菜料理より 一品
・野菜料理か主皿より 一品
・もり 又は かけそば
を選べる。
しかも締めの蕎麦はもりとかけを、1つずつ両方頼める(1種類で大盛りも可)。
さらに差額を払えば、もりかけ以外のお蕎麦にも変更できるという。
とにかく、わくわくするコースなのです。
まずは野菜小鉢で一杯

この日選んだ野菜小鉢は
・インゲン胡麻和え
・水茄子酢味噌和え
・芯野菜お浸し
の三品。
どれも薄味で、実に上品な味わい。
ご主人の田島さんは、都内の有名な蕎麦店の他に、野菜がメインの和食屋での経験も持つ方で、蕎麦前のツマミが全て小料理屋の一品料理のようなクオリティなのです。

聞けば、冷たい蕎麦用と温かい蕎麦用の出汁とは別に、一品料理用の出汁までとっているそう。
やっぱりこちらでは蕎麦前をしっかり楽しまなきゃ損!
カリッ、ねっとり。絶品の「山芋万頭 わさびあんかけ」

野菜料理には、「山芋万頭 わさびあんかけ」を選択。
外はカリっと揚がっていて、中はねっとり。
優しいけどしっかりした味わいのあんかけとの相性も抜群です。

主皿には「合鴨あぶり焼き」を。
和食らしいシンプルな味付けで、合鴨の味をしっかりと楽しめます。
料理に合わせるお酒は、お店の人に相談するのがおすすめ。
この日は三千盛の純米大吟醸をおすすめしてくれました。
癖がなくて、繊細な料理の味を引き立てます。

締めの蕎麦は“もり”も“かけ”もいただく

![[食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/05/20250518-tajima09.jpg)
締めの蕎麦はまず、もり。
蕎麦前がめちゃくちゃ美味しいお店ですが、やっぱりメインはお蕎麦。
細目でしなやかな蕎麦で、辛口の汁をちょっとつけて、ズズっとすすると実に爽やかな味わい。
二杯目は、かけで。
冷たい蕎麦と温かい蕎麦、両方味わえるのがとにかく最高!
かけは、実に透明感のある汁で、出汁の香りをしっかり感じます。

しなやかな食感の蕎麦と、上品な汁の組み合わせが実に絶妙。
最後の一滴まで飲み干してしまいました。
落ち着いた店内で、美味しくゆったりとした時間を楽しめる名店です。

(文◎小宮山雄飛、撮影◎C STUDIO 中村優子)
●著者プロフィール
小宮山雄飛
ホフディランのVo&Key担当。ミュージシャンの傍ら、グルメ番長として食のシーンでも活躍し、様々な雑誌やWEBサイトでの連載、レシピ開発なども行う。著書には『旨い!家カレー』『レモンライス レシピ』『小宮山雄飛 今日もひとり酒場』など。テレビ、ラジオ番組の出演なども多数。