煮干しの旨みが爆発! 『まぜそば 田なか』(東中野)の「煮干まぜそば」の魅力をラーメン官僚が語る

魚介の味を濃縮した一杯!「煮干まぜそば」

「煮干まぜそば」850円
「煮干まぜそば」850円

 カウンターに着席し、待つこと5分弱。「煮干まぜそば」が完成し、恭しく眼前に供されました。

 ウネウネと波打つ大量の太打ち麺の上に、大ぶりの豚チャーシューと炙り鶏モモ肉がどっしりと腰を下ろし、丼面積の3分の1程度を占拠しています。チャーシューの対角線上には見目麗しき黒バラ海苔が載せられ、中央部には、刻み玉ネギと刻みネギが小さな塊を作っています。

 必要にして十分な内容のトッピングを、視覚的な美しさにも配慮した形で配置。過剰でもなく過少でもない。このあたりのさじ加減の巧みさは、さすがのひと言です。

麺は生麺を使用。食べる度に煮干しの旨みが口内を駆け巡る
麺は生麺を使用。食べる度に煮干しの旨みが口内を駆け巡る

 さっそく数本の麺を箸でつかみ、ズズッと豪快にすすり上げます。煮干しに由来する大海の滋味がたっぷり含まれた濃密なソースが麺にしっかり絡みついた状態で口元へと運ばれ、味蕾へと到達した瞬間、うま味のビッグバンが発生。口腔内で煮干しの大群が泳いでいるかのような感覚が、リアリティをもって襲いかかってきました。

 ちなみに、田中代表は好きが高じて千葉県外房エリアに移住までしたほどのサーフィン好きとして知られています。そんな同氏にとって、千葉県産の煮干しはスペシャルな存在。

「千葉の海に少しでも恩返しをしたいという気持ちから、これまで煮干しを使ったラーメンを欠かさず作り続けてきました。この『煮干まぜそば』も、一切の妥協なしで気合を入れてつくり込んでいます」(田中代表)

 煮干しの“海”のうま味と、麺を構成する小麦の“土”のうま味が、まるで元々ひとつであったかのように舌上で一体化し、重層的な味わいを構築。舌がうま味に馴染むにつれ、煮干しに含まれるわずかな苦みや麺に含まれるかすかな甘みがじわりと味覚中枢へと伝わり、その複雑玄妙な食味に箸を持つ手が止められなくなる点も、特筆に値します。

使用するタレにもこだわりが詰まっている
使用するタレにもこだわりが詰まっている

 実はラーメン職人になる前は、イタリアンのシェフとして働いていた経験もある田中氏。「まぜそばは、スープがあるラーメンと比べるとパスタに近いスタイルの食べ物。であれば、イタリアンの世界で会得したノウハウをもっとうまく採り入れられるんじゃないか…。今はそんなことばかり考えています」。

 ラーメン作りのノウハウとイタリアン(パスタ)の知見を柔軟に融合させる…。そんな、田中代表の発想は、この「煮干まぜそば」においては、とくに麺に色濃く投影されています。

「実は、麺の原料となる粉として、国産小麦のほか、パスタに使用するイタリア産のデュラムセモリナ粉を配合しています」(田中代表)

パスタ的要素も感じさせる太平打ち麺
パスタ的要素も感じさせる太平打ち麺

 まるで顎を押し返すかのような力強い弾力性が、鮮烈な印象を刻む太平打ち麺。濃厚なソースに全く引けを取らないほど堂々たる存在感を放っています。無我夢中になって食べ進めるうちに、いつの間にか丼が空っぽになっていました。