東大生が愛してやまない名曲喫茶『麦』の”す”入りプリンとは?

「す」が入っていても、おいしいプリンの秘密

プリン450円。
プリン450円。

 さっそく噂のプリンを注文。威風堂々と登場したプリンは、思わず「でかい!」と声が漏れるほどの大きさ。しかし、暗いせいか、「す」をハッキリとは確認できない。そこで、やや明るい場所に移動して確かめてみると、上の画像のように、しっかりと視認できた。

 いただくと、しっかり、どっしりした食感と、卵の濃厚な風味。蒸しによる、適度な引き締まり具合。まさに王道のクラシック・プリンである。そして、食べながら気づいた。この無数に空いた穴(す)にカラメルソースが入り込んでいることを。これがいいアクセントになっている。どこを削り取っても、カラメルがきちんと主張してくるのだ。

 誰かに「ほら、なめらかじゃないだろ?」と聞かれたら、「いや、なめらかかどうかなんて関係ないです」とはっきり言い返すことができる。最近では「なめらか、とろ~り、クリーミー」などと表現するプリンがたくさんありますよね? でも、食べたら「これ、プリンじゃなくてカスタードクリームじゃん」とがっかりするようなものもありますよね? あれ、蒸していませんよね? つまりは“偽プリン”ってことですよねっ! と詰め寄ることもできそうだ。

 それよりも、ここのは“クラシックプリン道”ともいえるこだわりを感じるのだ。「プリンってのは、卵と牛乳をたっぷり使って蒸し上げて作るもんだ。“す”が入っているのは、蒸した証拠ってやつだ。てやんでぇ」とでも言いたげな、職人的なこだわりを感じる。

 というわけで、噂は本当だった。「す」が入っていてもうまいプリンはうまい。

 そして、店内にいるオジサンたちも、東大生らしき人も、読書をやめてポツリポツリとプリンを注文している。そうか、この人たちはきっと、明るいカフェでプリンを注文しにくいのだ。この暗がりで、見た目などを気にせず、うまいプリンをこっそり楽しむ。肩書きや人生の重圧があろうがなかろうが、こうした憩える場所が皆、必要なのだ。いやはや、このプリンの「す」は、人々の憩いの「巣」でもあったのだ。

珈琲は300円。
珈琲は300円。

(取材・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

名曲・珈琲 麦

店名:名曲・珈琲 麦

住:東京都文京区本郷2-39-5 B1
TEL:03-3811-6315
営:7:00~23:00 土~22:00、日~19:00
休:1月1日~3日