パエリアおこげの知られざる世界。本場バレンシアで初優勝日本人シェフの“米魂”を見た!

パエリア伝道師として日本各地へ

「鍋に水と材料を入れたら、パエリア職人は、アシストすることが大事」だという。
「鍋に水と材料を入れたら、パエリア職人は、アシストすることが大事」だという。

 パエリアは料理名だけではなく、作り方、食べ方も、そして、鍋を囲む時間も空間も、そして長い歴史も、全てがパエリアという世界観を知ったという川口さん。

「だから、テクニックだけでパエリアは作れないということがわかってから、作り方が変わりました。鍋に米や具材を入れて火にかけると、各具材が行きたい方向性があるのです。僕はその行きたい方向をアシストすることに専念しなければならない。例えると、ハイハイしている赤ちゃんが、行きたい方向に邪魔なものがあったらどけてあげるような感じです。火加減も鍋の動かし方も、鍋の中の具材の行きたい方向にアシストすると、具材の良さが出てくる。そしてもっともいい状態で火を止める。そうすると、目指したいパエリアができる。そうはいっても、僕だって毎日、成功するわけではないですけどね(笑)」

 川口さんは、「パエリア」という文化をたくさんの人に伝えたいと、日本各地に出向いて紹介する全国ツアーを行っている。

「バレンシアでは、お父さんや男たちが日曜日のお昼になると、家族や友人の為にパエリアを炊くんです。そして、 そのレシピは先祖代々父から子へと受け継がれている。こうした食の大切さを伝えていきたい」
「バレンシアでは、お父さんや男たちが日曜日のお昼になると、家族や友人の為にパエリアを炊くんです。そして、 そのレシピは先祖代々父から子へと受け継がれている。こうした食の大切さを伝えていきたい」

 川口さんのお話を聞いていて、そういえば、子供の頃は、毎週のように家族で鍋を囲んでいたっけと思い出した。確かに、そこにはお母さん、お父さん、子供の役割があった気がする。鍋底にこびりつくおこげを削りながら、今では、すっかりなくなってしまった光景を思い出しつつ、鍋底の食べ尽くしたおこげに、「おかわり、ダメだよね」と切なくなる。ちなみにコースで4,300円~、完全予約制なので、今度も「パエリア バレンシアーナ」を特注しよっと。

 ただし、お客さんにパエリアへの理解を深めてもらうため、原則として初訪問時には「パエリア バレンシアーナ」は出ないそう。でも、どうしても食べたいなら、予約時にお願いしてみよう。情熱次第では出してもらえる、かも?

(取材・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

anocado restaurante+(アノカド・リストランテ+)

店名:anocado restaurante+(アノカド・リストランテ+)

住:東京都杉並区成田東1-50-7
TEL:03-6383-2183
営:12:30~14:30、18:00~24:00(21:30L.O、金のみバータイム23:30L.O)
休:都度ホームページから確認を
https://www.anocado.com