神がかり的とん汁! 新潟の名店『とん汁 たちばな』(新潟)で自分史上最高のとん汁を食べてきた

常連さんたちも「今日何を食べるか」で迷い、やはり「とん汁定食」になる様子

『とん汁 たちばな』の看板
『とん汁 たちばな』の看板

 果たしてたどり着いた『とん汁 たちばな』。車の往来のあるロードサイド店ではあるものの、突然お店の前に人々が行列をなす様子はなかなかの圧巻です。さっそく筆者も記名台に名前を書き、店の前のベンチに座り20分ほど入店を待つことにしました。

行列ができるため、入店の前にあらかじめ記名台に名前と人数を書く仕組み。並ぶお客さんたち
行列ができるため、入店の前にあらかじめ記名台に名前と人数を書く仕組み。並ぶお客さんたち

 同じように並んでいる複数の人たちは「俺今日何すっかなー。やっぱり結局、とん汁定食になるんだよねー」「そうなんだよ。とん汁ラーメンもうまいけど、やっぱりなんだかんだで、とん汁定食になるんだよねー」などと話しています。

 筆者も並んでいる間、『とん汁 たちばな』のメニューを見て、同じように悩んでいましたが、頻繁には来ることができない『とん汁 たちばな』。魅力ある複数のメニューのうち、やはりここは「とん汁定食(並)」だろうという結論に達しました。

衛生的で無駄のない内観同様、シンプルかつ丁寧に作られたことがよくわかる上品なとん汁の味

「とん汁定食(並)」(950円)
「とん汁定食(並)」(950円)

 ようやく筆者の番が回ってきて、念願の入店です。とん汁の料理店ですので、相応に出る油などで店内が汚れても良いはずなのに、店内はとにかく綺麗に整頓されています。カウンター上の水のポットを置く位置には「絶対ここ!」という赤い印も書いてありました。

 このストイックな姿勢が好印象で、自ずとその味にも反映されているのではないかと思いました。さっそく「とん汁定食(並)」を注文し、数分でサーブされましたが、そのビジュアルは写真で見た通りのもので、とん汁、ご飯、漬物、おからのみ。このシンプルすぎる構成で、これだけの行列ができるわけですから、旨くないはずがありません。

味噌風味ではあるものの、丁寧に火入れしていることがわかる上品な味
味噌風味ではあるものの、丁寧に火入れしていることがわかる上品な味

 さっそくとん汁をすすってみると、見た目よりもあっさりしており、ふんだんに入れられた玉ねぎの効果で実に甘くて美味しい。入っている具材は玉ねぎのほかに豚肉、豆腐のみで、このほかは味噌と塩のみで味付けしているようで実にサッパリとした風合いです。

 筆者は自作ラーメンや、魚のアラ出汁などもやるため痛感しましたが、これだけ澄んだスープを取るには、相当丁寧な作業と工程が求められます。とん汁と言うと、ギットギトで強いパンチのものも多いですが、『とん汁 たちばな』のそれは実に上品で、それでいて妙にクセになる味のように思います。

「このとん汁にはこれしかない!」と思わせるベストマッチングなお米
「このとん汁にはこれしかない!」と思わせるベストマッチングなお米

 また、とん汁と一緒に食べるお米も実に美味しく、これは岐阜県の「いのちの壱(龍の瞳)」という入手しにくいブランド米を採用しているのだそうです。日本屈指の米どころの新潟県の中でも、かなり美味しいとされる妙高エリアのお米ではなく、あえて岐阜県のお米を採用しているところがミソで、やはりこれだけ丁寧に作ったとん汁に最も合うお米として選ばれているのだろうと思います。

素材の味を存分に引き出した漬物とおから
素材の味を存分に引き出した漬物とおから

 もちろん、漬物やおからもギトギトさせない素材の味を生かしたもので、アッという間にたいらげてしまいました。

不定期で通信販売されるパック詰めとん汁はわずか3分で完売に!?

「とん汁 たちばな」代表の松澤崇さん
「とん汁 たちばな」代表の松澤崇さん

 あまりにもうまい『とん汁 たちばな』の「とん汁定食(並)」でしたが、代表の松澤崇さんに話を聞いてみました。

「昭和47年創業で当初は大衆食堂でした。この食堂で初代が生み出したとん汁が徐々に話題になり、いつの日か専門店化していきました。当時、近隣にはファーストフードなどはなかったこともあり、早くてボリュームがあって温まることができる当店のとん汁は多くのお客さまにご支持いただきました。そう考えると、当店のとん汁は、新潟の雪国だからこそ生まれたソウルフードと言って良いかもしれません。

 当店のとん汁は豚肉、玉葱、豆腐、味噌、塩のみで作っておりますが、こだわりは大量の玉葱を使用しており、とん汁の水分のほとんどが玉葱から出るものであるということ。そして、とん汁のためだけに仕込んだオリジナル味噌を使用しているといった点です」(松澤さん)

 地元の妙高市の人々だけでなく、県外からも『とん汁 たちばな』を目当てに多くの人が訪れるようで、筆者が食べに行った際も関東圏のナンバーの車を見かけました。ただし、県外の人にとってはそう頻繁に通えるお店ではないことも確かです。『とん汁・たちばな』では、こういった県外のお客さんに対して、パック詰めとん汁を不定期で通信販売を行なっており筆者もオーダーしましたが、しかしここでもまた問題が……。

不定期で販売しているパック詰めとん汁
不定期で販売しているパック詰めとん汁

「通信販売のパック詰めとん汁は、店頭でご提供するものと同様、手作業でーつひとつお作りしてます。手作業のため生産数量に限りがあり、不定期ですが、数量限定にて注文を受けさせていただいております。前回は、11月7日に注文受付をしましたが、わずか3分で注文終了になりました。今後ともこのようなことが予想され、お客さまには大変恐縮ですが、WEBサイトなどでお問い合わせいただければ幸いです」(松澤さん)

 やはり、このとん汁を確実に食べるためにはお店に行くほうが良いような気もします。最後に、まだ『とん汁 たちばな』のとん汁を食べたことがない人へのメッセージもいただきました。

「当店は、新潟の片田舎・妙高市にあるとん汁専門店です。特別華やかではなく、インスタ映えもしませんが、当店のとん汁を食べて、ホッコリしていただきたく毎日精進しております。これから本格的なウィンターシーズンが始ります。是非、新潟・妙高にお越しの際にお立ち寄りいただければ幸いです」(松澤さん)

『とん汁 たちばな』のパック詰めとん汁(1パック850円)。お店と全く同じ味を味わえるものの、入手はなかなか難しいとも
『とん汁 たちばな』のパック詰めとん汁(1パック850円)。お店と全く同じ味を味わえるものの、入手はなかなか難しいとも

 この美味しいとん汁を日々食べることができる妙高エリアの方が羨ましく思います。ストイックで上品でありながら、妙にクセになる『とん汁 たちばな』のとん汁。近隣には温泉なども豊富にあります。ぜひ冬場の観光と合わせて食べに行かれてみてはいかがでしょうか。

(撮影・文◎松田義人)

●SHOP INFO

店名:とん汁の店たちばな

住:新潟県妙高市栗原2-3-10
TEL:0255-72-2450
営:10:30~18:45、土、日、祝日10:30~14:30、16:30~18:45
休:月曜 (※休日の場合は火曜日)
https://tontachi.com/