村上隆がプロデュースする『Bar Zingaro』のディープなこだわりとは?

村上隆がプロデュースするカフェの実力は?

 あると思っていたものがないと、がっくりくるが、ないと思っていたものがあると、ソワソワする。

「Bar Zingaro」を発見したときもそうだった。中野ブロードウェイの2階は、マニア向けの店がずらりと並び、奥に進むと、シャッターが下りたままの、やっているのかやっていないのかわからない謎の店があったりして、一般人には全く媚びない空気だったのに、突如、都会的で洗練された空間が現れたのだ。ある意味、中野ブロードウェイの空気を一切無視したかのような「異質な存在」にすら見えた。

村上隆がプロデュースする『Bar Zingaro』のディープなこだわりとは?
中野ブロードウェイの喧騒を忘れるような静かな空間

 ところが、調べてみると、ここの店をプロデュースしているのが現代美術家の村上隆氏だとわかり納得した。ご存知、アニメ、フィギュアなどのオタク系題材を用いた作品で日本のサブカルを世界に広めた人である。そういえば、店内には同氏の作品やグッズがところどころに置かれている。

 しかも、カウンターでは、エアロプレスやエスプレッソマシンでコーヒーを丹念に抽出するバリスタがいて、なんだか、ものすごくマニアックな空気が漂う。

オタクの聖地・中野ブロードウェイ『Bar Zingaro』で村上隆のカフェに行ってきた
本格的なエスプレッソマシンを揃えたカウンター。カクテル類も豊富

 ふと、大学入学当時にコーヒー研究部(ヒー研と呼ばれていた)に勧誘された時のことを思い出した。カリタのドリッパーを一列に並べ、先輩たちも並んで、息を止めて湯を一滴一滴注ぐ異様な光景。どんな体育会系の練習よりも真剣で、これを毎日、2時間もやるかと思うと、腰抜けの私は、「ヒー」と逃げ出したのである。

 そんな苦い経験もあって、「ここは絶対コーヒーだ。アルコールを注文すべきではない。今度こそコーヒーから目をそらしてはならない」と決意し、カプチーノを注文したのである。

 出てきたそれは、むむむ、一口飲めば、『ん?』。これ、カプチーノ?
ほんのりベリーやオレンジなど柑橘系の風味がして、やがてナッツのようなコクが押し寄せる。酸味が強くて、まるでワインのような……。いや、やっぱりコーヒーだ。今まで味わったことのない味わいに驚いた。

オタクの聖地・中野ブロードウェイ『Bar Zingaro』で村上隆のカフェに行ってきた
「フラワーラテ」620円
オタクの聖地・中野ブロードウェイ『Bar Zingaro』で村上隆のカフェに行ってきた
「Today’s Coffee」360円と「ほうれん草のクロックムッシュ」580円

 そこで、コーヒーを入れてくれたバリスタの方に話を聞いてみると、この店のコーヒーやカクテル、さらに内装をサポートしているのはノルウェー・オスロに本店を置く人気コーヒーカフェ「Fuglen (フグレン)」だと教えてくれた。