月曜夜だけ “羊好き”が集まる謎のラーメン店『人と羊』(荻窪)で前代未聞の「ひつじそば」を食べてきた

“人と羊の個性”が光りまくる一杯はこうして作られる

『人と羊』の料理人は村山新さん。「羊そば」を作るに至ったきっかけを聞くと、「数年前、ねいろ屋の荻窪店、神保町店で限定メニューを作っていた頃に出したメニューの1つです」とのこと。

「発想の元になったのは実はトルコ料理のキョフテ(羊肉のひき肉を使った料理)。私はトルコ料理やモロッコ料理などを食べ歩くのが趣味で、ある時、キョフテを食べながら、この羊肉とスパイスの複合的な旨みをラーメンで表現したら面白いなと思ったんです」と村山さん。

 その限定メニューが評判となり、昨年(2019年)11月 には、神保町にひつじそば専門店『人と羊』をオープン。その店はすぐに人気となったものの、今年に入り、お店を移転。4月には神保町店を閉め、新しい物件が決まるまでの間、『ねいろ屋 荻窪本店』で“間借り営業”のスタイルにしたとのこと。

月曜の夜だけ店名もメニューもガラリと変わります
月曜の夜だけ店名もメニューもガラリと変わります

「ひつじそば」について詳しく聞くと、「羊のコンソメは実は手間がかかるんです。まず、羊の骨を炊いて白湯をとり、また別の鍋で鶏ガラから白湯をとって、両方を合わせて、さらにラム肉の挽肉を入れて炊き上げ、最後に濾してコンソメにします。厨房が狭いこともあり、この工程だけで実は3日かかるんです……」と村山さん。月曜夜だけのために、3日もかけてスープを作っているとは。

 羊と鶏を一緒に炊けない理由は、「羊は非常にクセが強いものの、出汁をとる場合は鶏と一緒にすると鶏の方が強くて、羊が負けてしまうから」なんだそうです。「うちに来るお客様は、羊らしさを求めているので、より羊の個性を出すようにと、いろいろ試して今の作り方になりました」(村山さん)

ラムテリーヌは分厚くて食べ応え抜群です
ラムテリーヌは分厚くて食べ応え抜群です

 ラムテリーヌも、フレンチではなくトルコ料理のキョフテからの発想で作られているそうで、ラムの挽肉に、クミンやヒマラヤの山椒、ハーブ、ドライトマトを入れて作るとのこと。最初は団子にしていたけど、丸める手間と時間がかかりすぎるため、型に入れてテリーヌ状にしたんだそう。

 ちなみに、毎週、登場する限定メニューも羊好きを虜にしている理由です。限定メニューのほとんどは、その日限りでほぼ二度と出さないというこだわりぶり。限定そばだけではなく、本日の替え玉や本日のごはんも然り。

「休みの日に食べ歩いていて思うのですが、東京に美味しい店は星の数ほどたくさんありますよね。でも、面白い店、楽しい店はまだ少ない気がするんです。そして私が面白くて楽しいと思える店というのは、それを作る料理人しか絶対に出せないような強い個性を感じられる店。うちのお店も、そうした面白さや楽しさを感じてもらえる店にしたいと思っているんです」(村山さん)

 “他の店もお客様も絶対に思いつかない料理”を目指しているという村山さん。羊好きにとっては間違いなくワクワクできる面白いお店です。ぜひ行ってみてください。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

ひつじとそば 人と羊 画像

店名:ひつじとそば 人と羊

住:東京都杉並区天沼3-6-24 『ねいろ屋荻窪店』
TEL:非公開
営:月曜18:00~22:00(売り切れ次第閉店)
https://twitter.com/hito_to_you
https://www.instagram.com/hito_to_you