とんかつもワインも! 『アヒルストア』店主が案内する東京・目黒の「はしご酒」スポット

お次はワインバー『グリフォン』で乾杯!

8人も立てば満員という小体なスタンディングバーならではの、知らぬ同士の乾杯ムード
8人も立てば満員という小体なスタンディングバーならではの、知らぬ同士の乾杯ムード

 3軒目のこちらはワインバー。家の近所で、散歩の途中に偶然見つけた。こういう小さな酒場は開くのは簡単だが、成立させるのは実に難しいと思う。狭いが故に、お客との距離を取りづらいからだ。しかしながら、店主の内記さんは絶妙にそれをこなす。彼は寡黙だが、内に秘めた強さが穏やかな横顔に滲み出ていて、それがこの店に一本の結界を張っているようなところがある。お客のいじりを、柳のようなしなやかさでいなして空間をコントロールしている。いじらせている、と言ったほうが的確かも。

グラスワインは500円~、黒板メニューのおつまみは各種日替わり。「かみさんの岩中ポークリエット+パン」は350円
グラスワインは500円~、黒板メニューのおつまみは各種日替わり。「かみさんの岩中ポークリエット+パン」は350円

 ここではチーズをつまんでワインを飲むという愉しみがある。料理屋に行くとチーズまでたどり着けないことが多いのだ。この日は5年も寝かせたルイ・ジュリアン*を飲ませてもらった。店主、なかなかの変態とみた。初めまして同士の会話が飛び交うカウンターに身を沈めていると、言い表せない旅情に浸れる。

とっておきの〆の店は、家族経営のラーメン店『銀嶺』

なんとも“カッコいい”出で立ちの「ハムカツ」は300円。シャキーンと音が聞こえてくるよう
なんとも“カッコいい”出で立ちの「ハムカツ」は300円。シャキーンと音が聞こえてくるよう

 最後に、とっておきの〆の店『銀嶺』を記しておく。安価な小皿料理が充実した家族経営のラーメン屋さん。その一皿一皿は創意工夫と愛に満ちている。「キャベ玉」とかマジ最高、やや色あせた赤デコラのテーブルに実に映える。

日替わりの小皿料理にもセンスが光る。「ナス生姜」は200円と泣かせる価格
日替わりの小皿料理にもセンスが光る。「ナス生姜」は200円と泣かせる価格

 ふと子供の頃に通った駄菓子屋のことを思い出す。あの手の場所は、何度行っても胸トキめいたものだ。大らかだった古き良き昭和という時代。あの頃のノスタルジックな息遣いが、この店にはまだ残っている。ラーメンで〆るつもりだったのに、ついついまたレモンサワーでやり直してしまう……。狂気を探す幸せな旅の、終わりの始まり。

●SHOP INFO

1軒目
店名:とんかつ とんき 目黒本店
住:東京都目黒区下目黒1-1-2
TEL:03-3491-9928
営:16:00~22:45LO
休:火、第3月

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2軒目
店名:SWITCH COFFEE TOKYO 目黒店
住:東京都目黒区目黒1-17-23
TEL:03-6420-3633
営:10:00~19:00
休:水

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3軒目
店名:GRIFFON
住:東京都目黒区下目黒3-16-5
TEL:なし
営:19:00~24:00、土・日は15:00~
休:月(※祝日の際は営業15:00~、翌日振替休あり)

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4軒目
店名:九州ラーメン 銀嶺
住:東京都品川区小山2-6-10
TEL:非公開
営:11:30~13:30 LO、18:30~翌1:00
休:火

(文◎齊藤輝彦 撮影◎赤澤昂宥)

※当記事は『食楽』2019年冬号の記事を再構成したものです