創業78年! 行列が絶えない『ペリカン』(浅草)の食パンが愛され続ける理由

78年間変わらぬ、シンプルな味

赤い庇とペリカンマークが目印の『パンのペリカン』
赤い庇とペリカンマークが目印の『パンのペリカン』

 ペリカンの開店時刻は、午前8時。開店前の7時45分頃から、食パンを求めてやってくる人の待機列ができはじめます。「朝ごはんはペリカンのパンしか考えられない」という近所に住む人や、お店のモーニングメニューの仕入れにやってくる喫茶店オーナー、「浅草に来たからにはペリカンのパンが食べたい」という旅行客まで、平日の朝でもさまざまな人がやってくるのです。

棚には予約分の食パンがズラリ!
棚には予約分の食パンがズラリ!

 店内に並ぶ商品は、食パンとロールパンの2つのみ。カレーパンやアンパンなど、パンのラインナップを増やさないのには理由があります。それは先代が戦後、浅草にパン屋が続々と増えていくのを見て、「同じエリアに店を構える者同志で競い合いたくはない」という気持ちが芽生えたから。

 そこで、他店のようにパンの種類を増やすのではなく、食パンとロールパンにおいて、ほかの追随を許さない存在になろうと決めたのです。

四代目店主・渡辺陸さん
四代目店主・渡辺陸さん

 先代の遺していった想いは、ご子孫である四代目・陸さんにも受け継がれています。他店が新たな商品を生み出すなか、ペリカンが売り続けるのは、「食パン」と「ロールパン」のみ。令和となった現在までそのスタンスを守り続けています。

 食パンに使用している素材は小麦粉、塩、バター、砂糖、イースト、水のみで、小麦粉の種類は昔のまま。食パンの味は繊細に変わりますが、季節やその日の天候によって配合を調整することで、「いつもと変わらぬ味」が守られているのです。

密度が高くきめ細かいのが、ペリカンの食パンの特徴
密度が高くきめ細かいのが、ペリカンの食パンの特徴

 創業から変わらず守られているのは、「さりげなく、細く長く、お付き合いができるパン」であること。ほのかな塩味、パン本来の甘み、もっちりした弾力と、焼きたてのサクサク感。ペリカンの食パンは、毎日食べても飽きのこない魅力があります。

 焼いても、具を挟んでもよし。ジャムやフルーツを乗せてもよし。アイデア次第で無限の美味しさが広がるペリカンのパンは、珍しさや新しさばかり求められる現代に残された遺産のような存在といえるかもしれません。

(撮影・文◎藤間紗花)

●SHOP INFO

●パンのペリカン

住:東京都台東区寿4-7-4
TEL:03-3841-4686
営:8:00~17:00(店頭品切れの場合、閉店時間が早まる場合あり)
休:日曜・祝日・特別休業日(夏季・年末年始)