ちゃんこの聖地・両国で、絶対に味わうべき老舗『巴潟』の「塩ちゃんこ」を食べてきた

15種の具材からなるダシが絶品! 黄金スープの「塩ちゃんこ」

いわしつみれ・旬の魚2種・牛肉・鳥肉・蛤・ほたて貝・白菜・玉ネギ・しいたけ・水菜・えのき茸・ごぼう・焼豆腐・油揚げ・白ゴマの入った「国見山ちゃんこ」1人前3000円(税別)
いわしつみれ・旬の魚2種・牛肉・鳥肉・蛤・ほたて貝・白菜・玉ネギ・しいたけ・水菜・えのき茸・ごぼう・焼豆腐・油揚げ・白ゴマの入った「国見山ちゃんこ」1人前3000円(税別)

 “ちゃんこ”といえば「ちゃんこ鍋」を思い浮かべる人が多いと思いますが、実は力士が食べる料理なら、鍋でなくてもすべて“ちゃんこ”になるのだそう。「ちゃんこ鍋」がちゃんこ料理の代表として浸透していったのには、栄養バランスがよく、力士の体づくりにもっとも適しているからだといいます。

 巴潟のちゃんこメニューは4種類。店名の由来でもある巴潟親方の名前が付いた味噌味をはじめ、醤油味、塩味、水炊きと、それぞれ名高い力士の名前が付けられています。今回は、鶏ガラを水から半日煮詰め、塩で整えた“黄金スープ”が有名な「国見山ちゃんこ」をいただきます。

接客から店の掃除、“巴潟新聞”の企画・取材まで自ら行う女将の工藤みよ子さん
接客から店の掃除、“巴潟新聞”の企画・取材まで自ら行う女将の工藤みよ子さん

 店名の由来となった巴潟親方は、166cm、90kgという超小兵ながら、相手にまわしを取らせないほどの押し相撲で、“弾丸”というあだ名まで付けられた名力士でした。65歳になった1976年に相撲界から退きましたが、自身が親方を務めた友綱部屋兼自宅に、「ちゃんこ巴潟」を開業。開業は親方の意向というわけではなく、親方の次男による情熱に押し切られてのことだったそうです。

巴潟自慢の「つみれ」は、毎朝仕入れているいわしを使用
巴潟自慢の「つみれ」は、毎朝仕入れているいわしを使用

 創業当時、夫妻で店頭に立ち、初代店主として店を繁盛させていった巴潟親方ですが、1978年に逝去。共に店を立ち上げた次男・建二さんが2代目となり、現在は建二さんの婦人・みよ子さんが3代目の女将として切り盛りしています。

 3代目店主となった女将が目指すのは、“ちゃんこを通じて和食のおいしさを伝える”こと。具材の煮る順番ひとつでも味が変わってしまうため、女将は今も客前に出て自ら鍋を作っています。

香り高いごまをすりつぶし、鍋にかけていただきます
香り高いごまをすりつぶし、鍋にかけていただきます

 鶏ガラベースのスープに、牛肉やホタテ、つみれや魚、しいたけなどから染み出したダシが混ざり合い、一口食べればその深みのあるおいしさにため息が漏れます。数種類のダシから作られる複雑な味は、まさに和食の真髄。最近では訪日観光客も増えてきていて、海外にもちゃんこファンを獲得しつつあるそうです。

〆はスープにごはんを入れ、卵でとじたおじやに
〆はスープにごはんを入れ、卵でとじたおじやに

 身体の芯からあたたまるちゃんこ鍋は冬に人気が高まりますが、「栄養満点なので、本当は夏バテしがちな時期にも食べて欲しいんです」と女将。たしかに、優しく上品な味わいのちゃんこ鍋は、食欲の湧かないときでもペロリと食べられそう。

 元々「ちゃんこ」は、相撲部屋の力士たちが大人数で囲んでいた料理。同じ鍋を分け合えば、人と人との関係もほっこりと温まるかもしれません。

(取材・文◎藤間紗花)

●SHOP INFO

ちゃんこ巴潟

店名:ちゃんこ巴潟

住:東京都墨田区両国2-17-6
TEL:03-3632-5600
営:11:30~14:00、17:00~22:30(土日祝は16:30~)
休:月曜(6~8月のみ)