国宝級! 神田の老舗おでん屋『尾張家』で、名酒と絶品おでんを堪能してきた

国宝級! 神田の老舗おでん屋『尾張家』で、名酒と絶品おでんを堪能してきた
食楽web

 一日の仕事を終え、今日は頑張った~! という日。ちょっとだけ自分へのご褒美に、美味しいお酒と料理、そしてあたたかい雰囲気の店に行きたくなりますよね。

 今回向かったのは昭和2(1927)年創業のおでんの店、神田にある『尾張家』。昭和2年ということは92年前! そもそも昭和元年って6日しかなかったので、実質昭和の最初。その時からずーっとあるお店、まさに老舗です。

入り口は2つあり、どちらから入っても大丈夫。JR神田駅西口から徒歩2分
入り口は2つあり、どちらから入っても大丈夫。JR神田駅西口から徒歩2分

 建物は「関東大震災や東京大空襲で壊れているからね、戦後の建物なんですよ。だから創業時と一緒ではないの」と話す女将。この女将こそが、おでんと同じぐらい常連客に長い間親しまれている「店の顔」。

女将の長江操さん。カウンターに立ち続けて57年!
女将の長江操さん。カウンターに立ち続けて57年!

 約57年もの間、店のカウンターに立ち、接客を続けている女将。背筋もシャンとしていて、とても御年XX歳には見えません。健康でいる秘訣は、ご近所のお友達と日比谷公園までのウォーキングを続けていること。「この辺りだとね、皇居は庭みたいなものなのよ」と微笑みながら話す女将。さすが神田駅エリア。東京駅も徒歩圏内、ってことは、皇居だって徒歩圏内です。

「東京駅だけじゃないですよ。ここは大手町や日本橋も徒歩圏内だからね。大手町の大きな会社の方もよく食べに来てくれるのよ」。実は某大手財閥企業や官公庁の人たちも常連客。歴代の日銀総裁も食べに来ているとの噂が。も、もしやここは、日本を動かす、すごい人たちの憩いの場所なのかも!?

心も胃袋も満たされる看板のおでん

写真12時の場所から時計回りに、「豆腐」300円、「団子」1串100円、「大根」200円、「さつま揚げ」200円
写真12時の場所から時計回りに、「豆腐」300円、「団子」1串100円、「大根」200円、「さつま揚げ」200円

 女将の話につい夢中になり、注文が後回しになっていた! ハッとして、まずは看板料理のおでんを注文。もちろん女将にお任せです。

 ちなみにおでんは30種前後から選ぶことができ、一番人気は大根とのこと。「キャベツ巻や袋はうちで作っているので、ぜひ味わってほしいわね」と女将。練り物は築地の専門店から仕入れているとのことです。

同時に来た2皿目。12時の場所から時計回りに、「キャベツ巻」300円、「ちくわぶ」200円、「がんもどき」200円、中央の「こんにゃく」100円、「ごぼう巻き」200円
同時に来た2皿目。12時の場所から時計回りに、「キャベツ巻」300円、「ちくわぶ」200円、「がんもどき」200円、中央の「こんにゃく」100円、「ごぼう巻き」200円

 時間が早かったせいか、「大根はまだ色が浅いわね」と女将がつぶやいていたものの、いざ一口食べてみると、出汁のしっかりしみた美味しさ、そしてジューシーさを感じます。さらに、東京のおでんといったらこれでしょ、「ちくわぶ」! ねっちり、モチっとしていてたまらない! 「豆腐」はフルフル、「こんにゃく」はプルプル。食感の違いも楽しい。食べきった後、行儀が悪いかもしれないけれど、お皿を直接口につけて、おでんつゆもしっかり飲んで満喫します。

女将が手際よく、一番いい状態のおでんを皿に盛り付けてくれる。着物、割烹着、そしておでん。どこかホッとする世界がここに
女将が手際よく、一番いい状態のおでんを皿に盛り付けてくれる。着物、割烹着、そしておでん。どこかホッとする世界がここに

 おでん鍋を見ると、コンビニのように種類別に仕切られているのではなく、いろんな具がぎっしりと賑わっているような状態。一見、素人目にはフリーダムに見えるけれど、女将は箸でさささっと鍋の下の方からいい状態のものを取り出して盛り付けていきます。おそらく女将には、見えない奥底でじっくり浸かって、いつでもスタンバイオーケーのおでんたちが、どこにいるのか見えているんだろうなぁ。箸の動きに迷いがありません。

鮮魚の良さも店のこだわり

「刺身盛り合わせ」5000円。マダイやイサキ、コチ、イシダイなど華やか!
「刺身盛り合わせ」5000円。マダイやイサキ、コチ、イシダイなど華やか!

 続いて出てきたのは刺身の盛り合わせ。こちらも『尾張家』の看板料理です。毎朝築地から仕入れている旬の魚はもちろん日替わり。この日はお皿の中央にマグロ、マダイ、トリガイ、赤貝、シャコ、そして縁の方にイシダイ、アジ、マコガレイ、イサキ、コチが。種類豊富、お皿の中が竜宮城や~。と思わず心の中でつぶやいてしまいます。大根のツマがないのは、もしや、おでんのお店だから?

大関の熱燗1燗350円。えっ、350円! 本当に?
大関の熱燗1燗350円。えっ、350円! 本当に?

 おでんに合うお酒をお願いしたところ熱燗が。しかも1燗350円と驚きの価格。ということは、おでんいくつかと熱燗1つだったら、1000円以内で収まるってこと?

 ちなみにビールは大瓶で700円。「昔はね、あの会社の人にはアサヒ、この会社の人にはキリン、って銘柄を分けて出していたんですよ。ほらね、財閥の会社って系列会社とかあるでしょう」と女将。常連さんの顔と名前だけではなく、系列の会社のビールまで把握するとは! さすが大手町のすごい人たちが飲みに来る店だけあります。

ちなみに前菜と小鉢が最初に出てきます。これが200円。この日は枝豆とキンピラ
ちなみに前菜と小鉢が最初に出てきます。これが200円。この日は枝豆とキンピラ

 1階のカウンター席のほか、2階には座敷席があり、大勢で、または3人以上で会話も楽しみたい、という人は2階がおすすめ。冬場は予約しないと入れないほどの人気ですが、夏場なら、1~2人なら予約なしでも入れる場合が多いとのこと。

 クーラーがしっかり効いた店内で味わう熱々のおでんと熱燗。そして女将のさりげない心配りと何気ない会話。この店が長いこと愛され続けている理由が、わかるような気がしてきました。冬が人気なのはもちろん納得ですが、夏でも秋でも春でも食べたくなるおでん。神田駅の近くに行く機会があったら、またフラッと立ち寄りたくなる、穏やかな時間が流れるお店です。

 ちなみに、神田駅の反対側には、お蕎麦屋さんの『尾張屋』さんもあります。地図を見て行く際は、鍛冶町の尾張“家”さんで必ず確認を!

●SHOP INFO

尾張家 外観

尾張家

住:東京都千代田区鍛冶町1-6-4
TEL:03-3251-4320
営:17:00~22:30(LO22:00)
休:土曜、日曜、祝日