和食も“羊の時代”が到来!? 北千住の和食店『酒ナ羊』に潜入してきた

和食も“羊の時代”が到来!? 北千住の和食店『酒ナ羊』に潜入してきた
食楽web

 こんにちは。羊齧協会主席の菊池一弘です。

 日本で羊肉がまだ浸透していない料理ジャンルで最大のものが「和食」です。しかし今後、羊肉を扱う店がどんどん増えていくと私はみています。これまで食楽webでご紹介してきた荒木町の『ろっかん』や市谷の『焼き羊』なども和をベースとしたお店ですが、現時点では、和食の店は数えるほどしかなく、私は力の限り応援したいのです。

 そんな中、貴重な“和食羊店”が新たにオープンしたとの情報をキャッチして、さっそく訪問してきました。場所は北千住。駅を出て繁華街を歩いていると、羊愛が溢れ出るユニークな看板が目に入ります。並々ならぬ思いを感じるこの看板のセンス、嫌いではありません。

どどーん! と羊をアピールする看板
どどーん! と羊をアピールする看板

 2階にあるお店のドアを開けると、カウンターのみのこぢんまりとした内装です。こちらのオーナーの斎藤さんはウェスティンホテルの和食の料理長を務めていた方で、羊好きが高じて、羊肉に特化した和食のお店を今年3月にオープンさせました。その羊に対する熱量の大きさに私はまたぐっときました。

 酒ナ羊は、とことん羊肉にこだわり、多くのメニューで羊肉と羊肉から丁寧にとった出汁のみで構成されています。また、その他の食材も「羊の味を邪魔しない」ものが使われています。ちなみに、和食のお店なのに魚を使った料理はありません。徹底しているんです。

中華の羊肉串かと思いきや、おでんでした中華の羊肉串かと思いきや、おでんでした
中華の羊肉串かと思いきや、おでんでした

 この日いただいたのは、10品5000円のコース。羊愛と和食の技術に裏打ちされた素敵な内容でした。酒ナ羊の料理の特徴は何といっても「羊出汁(ひつじだし)」。下処理で丹念に脂をとっているので、くさみや脂っぽさはなく、澄んだやさしい味です。その出汁を使った「羊おでん」や「季節の野菜の炊き合わせ」は、薄味なのにしっかり羊の存在感が感じられます。おでんには、アクセントに生胡椒が使われるなど、メリハリのある味で10品全て途中で飽きることがありません。

季節の野菜に羊出汁がよく染みています
季節の野菜に羊出汁がよく染みています

 この日のメインは、羊出汁にくぐらせたミョウガとネギの上に、昆布〆した羊肉の肩ロースがのった一品。合わせ出汁でうまみたっぷりです。その他にも、出汁をとる時にすくった羊の脂と梅干を使った焼きチーズや鶏肉のみそ漬など、羊が表に裏にと驚かされる羊和食が続きます。

ミョウガとネギにしみた羊出汁がポイント
ミョウガとネギにしみた羊出汁がポイント
羊のローストに、粗くおろした山葵。下には木の芽とうどが敷いてあります
羊のローストに、粗くおろした山葵。下には木の芽とうどが敷いてあります

 〆は、羊出汁のクスクス(世界最小のパスタ)であっさり軽い雑炊風の一品でした。お茶碗一杯をあっという間に食べてしまい、ドンブリいっぱい出てきてもまだいけそうな軽さです。和食なのに米をあえて使わず、様々な素材を柔軟に使って「おいしさ」を追求しているスタイルにも好感が持てました。

 店の名前に「酒」が入るように、日本酒と料理の組み合わせにもこだわりがあり、この日はお勧めのものを料理に合わせて3種類いただきました。日本酒と和食羊の相性も抜群で、今後の発展への期待も高まります。

 羊肉はジャンルを超え、組み合わせの可能性は無限大。この新店舗の誕生によって、羊業界で「和食」が加速しそうです。

●SHOP INFO

店名:酒ナ羊

住:東京都足立区千住2-65 2F
TEL:090-5543-7313
営:18:00~23:00
休:年末年始
席数:カウンター6席

●プロフィール

菊池一弘

羊齧協会主席。羊肉を常食する岩手県遠野市出身の父の影響で、羊肉料理に親しんで育つ。北京留学中に現地の味に触れ、その魅力に開眼し羊好きの消費 者団体「羊齧協会」を結成。本業は、イベントの開催・運営、場作りのプロとしてのアドバイザー業務などに携わっている。最近は四川フェスの運営団体麻辣連盟の幹事長も兼務。
http://hitujikajiri.com/