うどんの概念がぶち壊される! 武蔵野うどん『うどきち』の「ウルトラもち麺」を食べてきた

選べる、こだわりうどん

 午前11時すぎに店の前で友人と合流。開店30分前だというのに、案の定、店の前はおそらくテレビを見た人たちで長蛇の列です。私と友人も並びながら、店前にある看板メニューを眺めつつメニューを選びます。

一軒家のお店で、入り口も一般的な民家の玄関です
一軒家のお店で、入り口も一般的な民家の玄関です
この日はTV放送の影響による混雑を避けるため、作るのに時間がかかるというカレー肉汁うどん、みそ肉汁うどん、肉そばの3メニューはお休みでした
この日はTV放送の影響による混雑を避けるため、作るのに時間がかかるというカレー肉汁うどん、みそ肉汁うどん、肉そばの3メニューはお休みでした

 ところで、「武蔵野うどん」といえば、太くてしっかりとしたコシの力強い印象です。そしてザルに載った冷たいうどんを、温かい汁につけて食べるスタイル。つけ汁は「肉汁」が代表的で、がっつり男性的なイメージですね。『うどきち』さんでも、定番は「肉汁うどん」ですが、肉汁の味にバリエーションがあり、カレーや味噌、麻辣系の「赤」など4つから選ぶことができるんです。

 そしてもっとすごいのは、ここでは、うどんも選ぶことができることです。太さや硬さ、量のことではありません。「田舎麺」「もち麺」「白もち麺」「ウルトラもち麺」の4つがあり、小麦や製法などに違いがあって、好きな麺を選ぶことができるんです。つまり、ご主人はその4つのうどんを打ち分けているということ。なんというこだわりでしょうか。

 ともあれ、今回、我々は「ウルトラもち麺」の一択です。つけ汁は定番の「肉汁うどん」と、期間限定で登場していた麻辣風味の「赤肉汁うどん」に決定。

 畳敷きの大部屋に案内され、年配のご夫婦と相席になりました。ご夫婦のお父さんが「もち麺にしようかな」などと迷っていたのですが、奥さんに「ウルトラに決まってんでしょ」と言われて即座に折れていました。確かに、ほとんどのお客さんがそれを注文していますし、ここは足並みを揃えておいたほうが平和だと思います。

「肉汁うどん」(並)780円(ウルトラもち麺で追加+100円) ちなみに大は、930円
「肉汁うどん」(並)780円(ウルトラもち麺で追加+100円) ちなみに大は、930円
「赤肉汁うどん」(並)880円(ウルトラもち麺で追加+100円)ちなみに大は、1,030円
「赤肉汁うどん」(並)880円(ウルトラもち麺で追加+100円)ちなみに大は、1,030円

 さあ、「ウルトラもち麺」を実食です。見た目からして只者ではないことがわかります。つやつやした小麦色で、うどんの内側から光を放っているような神々しさです。

 まずは麺だけを食べてみます。メニューに「生麩のようです」と説明があった通り(上の画像参照)、口中にぺタッと吸い付くような感じがありますが、みずみずしくて、つるつるっと舌を滑ります。噛むと跳ね返してくるような弾力もあり、そして繊細な小麦の香りがフワッと立つんです。

 確かにこんな口当たりのうどんは食べたことがありません。「武蔵野うどん」は力強い男性的なイメージでしたが、この「ウルトラもち麺」は、どちらかというと女性的。艶かしくて、もっちりしていて、色っぽい感じがするんです。

 相席になったご夫婦のお父さんに至っては、1本うどんを食べるたびに、「フゥ~、うまいねぇ」「ヒィ~、すごいねぇ」を連呼し、「いいねぇ」「最高だね~」と奥さんに同調を求めています。

手前にある幅広の部分は麺の「耳」
手前にある幅広の部分は麺の「耳」

 ところで、テーブルには『うどんのお話』という冊子が置かれていました。それによると、「もち麺」は九州産の小麦「ちくごいづみ」、田舎麺は北海道産の小麦。そして「ウルトラもち麺」は、最も高級なもち小麦「もち姫」を使っているそうです。

 製麺は、コシを出すために生地を2メートルほどに伸ばし、丸めてプレスする作業を何度も繰り返すことで、ミルフィーユ状の層を作っているそうです。そして、「ウルトラもち麺」はその層が1000層以上にもなるのだとか。繰り返しますが1000層です。すごくないですか?

 さらに、この唯一無二のもちもち感は、季節によって塩分濃度を変えて練り、低温でじっくり2日寝かせることでようやく完成するのだそう。ご主人のうどんに対する姿勢はまるで研究者のようです。

「肉汁うどん」のつけ汁
「肉汁うどん」のつけ汁

 そして、麺だけではなく、つけ汁も秀逸でした。

 化学調味料を使わずに天然素材だけでとるダシやカエシ。しかも、十分な熟成を経たカエシを使っているとのことで、魚介とお醤油のまろやかさがうどんにぴったりです。また、ほんのり焦げ目をつけた油揚げ、素揚げしたネギ、そしてたっぷり入った柔らかな豚肉といった具材のバランスも最高。

たっぷりのゴマと山椒、唐辛子のバランスも絶妙
たっぷりのゴマと山椒、唐辛子のバランスも絶妙

 また、「赤肉うどん」は、麻辣系ですがそれほど辛すぎず、山椒の痺れ具合もいい塩梅。個人的にはこの「赤肉うどん」が、刺激があってクセになる味でした。

 まとめると、「ウルトラもち麺」は、たしかに筆者のうどん史上、最高のもちもち感。うどんの概念をぶち壊されました。しかし、ここで相席のお父さんがボソッと一言。「普通の“もち麺”の方はどんな“もちもち度合い”なんだろうね?」と。なるほど。確かに私たちは今、ウルトラの“もちもち度”しか知らないのです。確かに気になる。

 麺にこだわりまくっている『うどきち』さんなら、「もち麺」でも「田舎麺」でも、どのうどんでも、概念をぶち壊された可能性があるんです。やっぱり他も頼んでおくべきでした。が、お腹いっぱいで後の祭り。

 というわけで、皆さんが、『うどきち』さんに食べに行くときは、“ウルトラ”だけでなく、ぜひ他の麺も食べ比べてみてくださいね。

(取材・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

自家製うどん うどきち

店名:自家製うどん うどきち

住:埼玉県所沢市和ヶ原1-691-62
TEL:04-2947-0500
営:11:30~14:15
休:火・水(不定休あり)