日本橋のご馳走として愛される『小洞天』の肉密度MAXの絶品シュウマイを食べてきた

戦後の復興と共に育まれた東京の味

「当時は第二次世界大戦中や戦後の時代。大空襲で焼け野原になった東京には、今のように外食店が多数あったわけではなく、みんなが“ごちそう”を求めていました。この店のシュウマイも、“ごちそう”と感じてもらうために、本場のシュウマイを日本風にアレンジし、大きく、かみごたえがあり、子供でもわかりやすい甘さを出したそうです」

「ごちそう」感の象徴といえるのが、今も定番メニューとして残る「シュウマイとごはん」(840円)。白ご飯とスープがつく、いわば「シュウマイ定食」ですが、他のシュウマイを名物にする店でも、このスタイルで提供する店は数えるほどしかありません。まさしく、この店にとってシュウマイそのものが「ごちそう」のメインディッシュだった証拠です。

オープン当時から変わらないレシピで作られているシュウマイ。それにご飯とスープがついた「シュウマイとご飯」840円
オープン当時から変わらないレシピで作られているシュウマイ。それにご飯とスープがついた「シュウマイとご飯」840円

 その後、高度経済成長とともに、日本橋界隈はオフィス街として発達。ただそれでも飲食店が今ほど多かったわけではなく、小洞天の「ポークシュウマイ」は、近隣の会社勤めをする人々を中心に、日本橋を代表する「ごちそう」として愛され続けてきました。

「今でもたまに、昔を思い出してポークシュウマイを食べに来る、当時の常連さんもいらっしゃいます。そういう方々に『変わらないおいしさ』と喜んでもらえるのは嬉しいですね。でも味を変えない本当の理由は、味に自信があるから。今でもうちのシュウマイは美味しいと、自信を持って言えます」

 実はもうひとつの「エビシュウマイ」も、歴史は20年と「ポークシュウマイ」に比べて若者? ですが、「ポークシュウマイ」に通じる「甘さ」「大ぶり」「食感」の3拍子が揃った、「ごちそう」感が溢れています。

 大きさは、「ポークシュウマイ」よりもひとまわり大きめ。その理由は、シュウマイの構造にあります。エビの半身とすり身を、6層に重ねて成形。いわゆるエビのミルフィーユ。その形状を維持するために、ひとつひとつ手づくりしているそうで、必然的にある程度の大きさを保たなければならないといいます。

鮮やかな断面がこだわりを感じさせる佇まい。「エビシュウマイ」380円
鮮やかな断面がこだわりを感じさせる佇まい。「エビシュウマイ」380円

 そうしてできあがった「エビシュウマイ」は、食べた瞬間、エビの身のプリプリ感、すり身のしっとり感と、2種の異なる食感が口を楽しませてくれます。そして間髪入れず、2種のエビの異なる甘みと香りが、口のなかにふわっと広がります。3拍子の内容は「ポークシュウマイ」とは異なるものの、「エビシュウマイ」にしか出せない、贅沢な幸福感溢れる「ごちそう」なおいしさと言えます。

 その作る手間と具材の贅沢さもあり、「エビシュウマイ」は一個あたり380円!(ちなみに「ポークシュウマイ」の倍以上!!)ただ、その希少さ、高価さをも納得させる味わいが、「エビシュウマイ」には間違いなくあります。テイクアウトもできますが、「ポークシュウマイ」とともに、蒸したてはまた格別。ぜひ店内で食べてみてください。

●SHOP INFO

小洞店 日本橋本店 店内

店名:小洞天 日本橋本店

住:東京都中央区日本橋1-2-17
TEL:03-3272-1071
営:11:00~15:00(LO14:30)、17:00~22:00(LO21:00)土日祝は21:00(LO20:15)まで
休:年中無休(12月29日~1月3日を除く)
http://www.shodoten.com

●著者プロフィール

シュウマイ潤

本名種藤潤。教育大学卒業後、フリーランスのライター、エディター、ウェブプランナーとして活動を開始し、現在はオーガニックと食を中心とした幅広いジャンルで取材執筆を行う。焼売に関しては2015年頃から着目し、インスタグラム「焼売生活」で全国各地の焼売を実食し発信。2018年4月現在で200種類を制覇した。2018年5月にTBS「マツコの知らない世界」でシュウマイの知らない世界を紹介している。