シュウマイ潤の焼売探訪。手間をかけるほど美味しくなる『手打ちそば小菅』の和風シュウマイ

肉は不使用。贅沢な海鮮具材を、丁寧に仕上げる

 使用される食材は、ずわいがに、はも、玉ねぎ、白菜、そしてそれらを包む細かく刻まれた皮。最初の二つは言わずと知れた高級食材。単価が高いのも納得です。

 ただ、仕込みと調理の丁寧なプロセスを見ると、より高価であることに納得でき、むしろ安いぐらいでは? と思えてきます。白菜は細かく刻み、塩を振り、2時間ほど重石をして水分とアクを抜きます。それに刻んだ玉ねぎとほぐしたずわいがに、はもをあえ、円筒状に整えます。その上に、刻んだシュウマイの皮をまぶし、形成は終了です。

 そして蒸す工程ですが、一から蒸すと時間がかかってしまうため、仕込みの状態で約20分蒸し、冷蔵庫に入れておきます。そして注文が入ったのち、7分間再加熱し、提供します。その蒸し方にも特徴があり、あえて圧力鍋を使い、一定の状態まで加熱したのち、火を消し余熱で仕上げるそうです。そうすることで、余計な水分が含まれず、ほどよい状態で仕上がるといいます。あの心地よい食感が出るのは、この絶妙な蒸し加減によるところが大きいのでしょう。

 ここまで手が込んでいると、シュウマイではなく別料理では? と思えてきますが、「まあ、工程そのものはシュウマイと変わらないので」と、笑顔で店主が言うのですから、シュウマイということで良いのではないでしょうか。この定義に縛られない自由度もまた、シュウマイの良いところだと、私は個人的に思います。

 シュウマイは、20年前の創業以来続く看板メニューの一つだそうです。ただ、現在の「和風かにしゅうまい」は、三代目に当たるそう。初代はかに肉は入っていましたが、鴨だしも入れていたそう。二代目は、鴨だしと鴨肉で作られた、いわゆる「鴨しゅうまい」。そしてさらなる美味を追い求めた結果、現在の「和風かにしゅうまい」に落ち着いたといいます。

 シュウマイを始めたきっかけは、他店にはないメニューを作りたかったことと、調理時に手間がかからないこと。現在、店主は一人で仕込みから調理までを行うため、極力調理時に手間と時間をかけない料理を中心に構成しています。その分、仕込みには手間をかける。そのため、シュウマイはランチ後に集中して仕込み、夜しか提供しません。そして、蕎麦や他の料理にも通じると前置きしつつ、手間をかけた分だけ、シュウマイは美味しくなる、と店主は断言していました。

 こうした仕込みの手間と、できるだけ無駄な食材を出したくないため、シュウマイをはじめとする料理は、あまり多くの量は仕込まないそう。シュウマイと酒、〆に蕎麦、と、他のシュウマイにはない楽しみ方をしたい場合は、事前予約をお忘れなく。

●SHOP INFO

手打ちそば小菅 入口

店名:手打ちそば小菅

住:東京都目黒区目黒1-5-16
TEL:03-3491-2132
営:11:30~15:00、17:30~22:00、日祝12:00~15:00、17:30~22:00
休:月曜
http://www.soba-kosuge.com/

●著者プロフィール

シュウマイ潤

本名種藤潤。教育大学卒業後、フリーランスのライター、エディター、ウェブプランナーとして活動を開始し、現在はオーガニックと食を中心とした幅広いジャンルで取材執筆を行う。焼売に関しては2015年頃から着目し、インスタグラム「焼売生活」で全国各地の焼売を実食し発信。2018年4月現在で200種類を制覇した。2018年5月にTBS「マツコの知らない世界」でシュウマイの知らない世界を紹介している。