連日行列&リピーター続出! 街まで活気づく『純手打ち らーめん だるま』が超人気の理由

手打ち麺へのこだわりとは?

 後日、改めて『だるま』さんに行き、みんなを虜にする「醤油らーめん」の秘密を伺うことにしました。

 実は店主の佐藤さんは『食堂 七彩』『麺や 七彩』のどちらでも店長を経験し、計4年勤めていたことが判明。そういえば『麺や 七彩』は、“純手打ち麺で有名店です。まずは「何故手打ちなのか」という素朴な質問をしてみました。

「手打ち(麺)は、食べるのも打つのも大好きなんです。よく人から“手打ちは大変じゃない?”と聞かれますが、何より好きだから続けられると思って」

 とはいえ、麺の仕込みに毎日3時間半かかるそうです。国産小麦粉16キロを4キロずつ4回。かんすい、塩、水でこねて丸め、踏むのに1時間半、伸ばすのに1時間半。熟成時間も半日と、やっぱり大変そうです。

「うちの麺の食感は、しっかり茹で切った状態で、弾力があってモチッとさせるようにしています。そのためには、こねる時間、踏む時間、伸ばす時間、熟成時間をしっかりとって、強い麺を作るのがポイントなんです」

 こうした手打ちの技術は、修業先だけではなく佐藤さん自身の日々研究も加わり、「打ち方は讃岐うどんから、麺を伸ばす所作は蕎麦から、それぞれ研究した」と言います。

「ただ、日本の麺作りは地域によっても全然違うので、まだまだ研究していて、少しずつ改良しているんですよ」

スープ、油、具材も妥協なし

 “だるまさん”のこだわりは麺だけではありません。醤油スープのベースは、鶏の清湯スープにカツオ節やサバ節、昆布などを使った魚介系スープを合わせ、カエシは生揚げ醤油、再仕込み、濃口醤油など3~4種類の醤油の配合を変えて使っているそうです。さらにカエシと一緒に入れる油は、鶏、豚からとった後、タマネギ、ネギ、ニンニク、生姜などで香りづけし、その後、煮干しでさらに香りをつけている特製油です。

「ラーメンの油は味の印象をガラリと変える“要”でもあります。毎朝、必ず試食するのですが、油が気に入らないと捨てざるをえないことも。スープやカエシは多少の幅で調整できますが、油は一旦作ると修正できません。お客さんにわからない微妙な違いでも、1日中作っている自分にとっては気持ち悪いので、作り直します」

 佐藤さんは、大学卒業後、ラーメンとは無縁のIT企業に就職し、起業を考えていたそう。しかし、毎日PCに向かい、人の顔が見えない作業に違和感を感じたと言います。

「今後の人生を改めて考えた時、自分の昔の夢の1つであったラーメン屋の世界に飛び込んだんです。七彩さんでの修業や麺打ちを通して学ぶことが多かった。たとえば、手打ち麺を通して、人はきっちり均一なものより、不規則なもの、揺らいでいるもの方が心地いいこと。またお客さんと接する毎日は変化に富み、日々進化がある。そんな様々な気付きもあって、この稼業にハマっていきました」

 最後に、毎日すごい行列になっている感想を聞くと…

「人通りが少ない場所にオープンしたので想定外でした。でもありがたいです。ただ、今は杯数を増やすことよりも、1つ1つの質を上げたいと思っているので早仕舞いすることも多いです。日々進歩を続け、いつか、自分のラーメンはこれだ! って自信を持って言える一杯を目指して楽しんでいます」

 佐藤さんと話していると、「綺麗過ぎることがいいわけではない」「ちょっとくらい違うものがあったほうが飽きない」など、ラーメンの話とはいえ、とても深い話に聞こえてきます。そんなお話を聞いて、改めて佐藤さんの手打ち麺の魅力は何かと考えた時、やはり心地よさの中に感じる安心感が一番大きい気がしました。だからまた食べたくなる、というわけです。

 ここからは、おまけで『だるま』の命とも言える絶品手打ち麺について、その手打ちの様子をレポートします。