混ぜるとなぜ旨い? “混ぜるカレー”の元祖・スリランカカレーの名店『アプサラ』で答えを見つけた!

絶品バナナリーフ包みのスリランカカレー

『アプサラ レストラン&バー』の「スリランカカレーのバナナリーフ包み」(1,600円)は、大きなバナナの葉に折りたたまれ、その上にパパドという薄焼き煎餅が載っかって登場します。バナナの葉は、爽やかな香りを楽しめるのはもちろん、実は抗菌効果もあるんだそうです。

「スリランカカレーのバナナリーフ包み」1,600円(テイクアウト可)
「スリランカカレーのバナナリーフ包み」1,600円(テイクアウト可)

 折りたたまれたバナナの葉っぱを開けると、ご覧のようにおかずが盛り盛り。店主のジャナカさんとダヌーシュカさんにその内容を伺うと、おかずはその日によって変わるそうですが、いつも12種類ほど入るそうです。

「今日は、ココナッツサンボル(ココナッツとスリランカの鰹節のふりかけ)、かき菜の炒め物、ビーツのカレー、ナスのカレー、パリップ(豆のカレー)、里芋と玉ねぎと鰹節の炒め物、きのこのココナッツミルク煮、シーニサンボル(玉ねぎ、ハーブ、スパイス、鰹節の炒め物)、ツナのコロッケ、チキンカレー、卵、パパド。そして下にはバスマティライスです」

 まずは、ちょっとずつ、おかずを味わってみます。例えばかき菜の炒め物は、苦味と華やかさを感じる香り。ビーツは甘く、豆のカレーは豆のコクとココナッツの風味が広がります。また、チキンカレーは柔らかくてほろほろでスパイシー。1つ1つの素材の味を引き出すように、スパイスやハーブ、ココナッツミルクなどを巧みに使い分けているのがわかります。

 今度はおかずを全部、混ぜて食べてみます。まずはパパドをパリパリと割り、さらにフォークとナイフを使って、鶏肉も繊維にそってバラバラにし、まん丸の可愛いコロッケも破壊。心苦しいですが、美しい盛り付けを思いっきり崩して混ぜました。途中で、スプーンですくって食べると、その部分に多いおかずの味が突出します。それではダメ。もっともっと、まんべんなく混ぜて食べなくては。

 ようやく、具材がバラバラになり、改めて食べてみると、複数の味が重なりあい、酸味、甘味、渋味、辛味、苦味といった味が層になって複雑な味わい。淡白なバスマティライスに多種多様な味が染み込んで、サラサラと食べられます。もう手が止まらなくなるほど、旨みが深くて美味しい!

激しくかき混ぜてみました
激しくかき混ぜてみました

 さっぱりしていて、あっという間に食べ終わってしまいました。個性的なおかずたちなのに、味はケンカするどころか、旨みが増す。どうしても不思議です。そこで、ジャナカさんにスリランカカレーの特徴を聞いてみました。

「まずスリランカのカレーの特徴は、油の量がとても少ないことです。だから北インドのカレーよりもサラサラしていると思います。また、じっくり煮込むものもありますが、食材の味を引き出すためにスパイスやハーブを使ってサッと作る炒め物系が多いのも特徴です。さらにココナッツミルクも多用するので、比較的マイルドなカレーが多いんですよ」

手前のオレンジ色のフレーク状のココナッツサンボルが、ココナッツとスリランカの鰹節であるモルディブ・フィッシュを使ったふりかけ
手前のオレンジ色のフレーク状のココナッツサンボルが、ココナッツとスリランカの鰹節であるモルディブ・フィッシュを使ったふりかけ

 確かに全体的に脂っこさがなく、野菜を使った炒め物や煮物がたくさんあってさっぱりしている印象。南インド料理に近い感覚でしょうか。1つ1つのおかずがくどさがないので、混ぜても味が絡み合いやすいということでしょう。

「もう1つの大きな特徴としては、日本の鰹節に似た“モルディブ・フィッシュ”を多用することです。“モルディブ・フィッシュ”とは、ハガツオをはらわた入りのまま茹でて燻し、天日で乾燥させたもので、これをカレーや煮物、炒め物などにいろいろ使います」

 鰹節のように出汁をとるために使うわけではないそうですが、料理にちょい足ししたり、ふりかけとして使ったりするそうです。

 つまり、スリランカカレーが混ぜるほどに美味しくなる理由は、下記の3点に集約されそうです。

【1】油をあまり使わない
【2】食材の持ち味を引き出すシンプルな調理法とスパイス使い
【3】モルディブ・フィッシュの旨みで味に統一感を出す

バスマティライスに、カレーや煮物、炒め物の味が混ぜ合わせるほどに染み込む
バスマティライスに、カレーや煮物、炒め物の味が混ぜ合わせるほどに染み込む

 しかし、ここで気づきました。混ぜまくった「バナナリーフ包みのカレー」は、日本の“炊き込み御飯”に似た感じがしたのです。蒸し上げているせいもありますが、混ぜたことによってお米に旨みが染み込んだというか……。

そういえば、スリランカに近い南インドには、スパイスの炊き込み御飯「ビリヤニ」もあります。あれもマサラ(カレー)とお米を重ねて層にして作るそうです。

 つまり “まぜまぜカレーの美味しさ”は、混ぜた結果美味しくなるのではなく、最初から混ぜることを前提に、各種のおかずを作っているのではないか、と思います。それは、ビリヤニ同様、お米(バスマティライス)を美味しく味わうため。スリランカは日本と同じくお米が主食です。

 とにもかくにも絶品の「スリランカカレーのバナナリーフ包み」を体験しに、『アプサラ レストラン&バー』に行ってみてください!本当に美味しくてヤミツキになりますよ!

(取材・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

アプサラ レストラン&バー 店内

店名:『アプサラ レストラン&バー』

住:東京都新宿区西早稲田3丁目19-1 いせかねビル1F
TEL:03-6205-5252
営:11:30~22:30
休:なし