体が芯から温まる!羊肉を骨ごと味わう「羊蠍子鍋」専門店に行ってきた!

体が芯から温まる!羊肉を骨ごと味わう「羊蠍子鍋」専門店に行ってきた!
食楽web

北京のイスラム教徒の味「羊蠍子(ヤンシエズ)」とは?

 骨周りの肉は羊にとどまらず美味しいものですが、「羊の背骨」という日本ではあまり馴染みのない部位を豪快に使った中国の鍋料理があるのをご存知でしょうか? その名も「羊蠍子(ヤンシエズ)」。

 一瞬、ぎょっとする名前ですが、背骨の形が蠍に見えるところからついた名前で、非常に中国語っぽく、漢詩の白髪三千丈的な大陸らしいネーミングです。背骨の周りの肉と骨髄の味を楽しみ、その出汁で野菜なども楽しむ鍋料理で、寒い北京らしく、辛味の効いたスープで食べる名物料理です。

日本唯一?羊蠍子の専門店「蠍子王」

 新大久保の外れにある「蠍子王(しゃしおう)」は、ギラギラした看板、地下に降りる暗い階段とその奥から聞こえる中国語のTVの音声……となかなか入店難易度が高いお店ですが、実はいたって真面目な北京人のオーナーと店長が経営する、日本唯一の羊蠍子の専門店です。

一見すると入店しづらい雰囲気だが、入ってみれば至福の鍋にありつける
一見すると入店しづらい雰囲気だが、入ってみれば至福の鍋にありつける

 2016年にオープンして数ヶ月経ってもWEB上に一切情報が流れず、ある中国の友人から聞いた情報をもとに尋ねたお店でした。こちらの羊蠍子鍋(2人前2,800円)は北京人の店長が自信を持ってつくる本場の味そのもの!お客のほとんどが中国人ということからも、そのこだわりのほどが見て取れます。

 食べる時は、まずは豪快に骨を手でつかみ、周りの肉を味わい、骨の髄をすすります。すこしお腹が落ち着いたところで野菜やきのこを入れて、骨から染み出た出汁を味わう豪快な料理。個人的には、さらに薄切りの羊肉(800円)を追加して、羊出汁を絡めて食べるのもおすすめです。

 ちなみに、この羊蠍子鍋の発祥はというと、北京の「牛街(ニュウジエ)」という「回族(イスラム系民族)」が多く住むストリートにあります。そこの名物料理がこの羊蠍子で、北京では以前から広く食べられていました。これは私が中国で暮らしていた10年前の話なので、今はどうかわかりませんが、冬の北京というと、火鍋とともに、この羊蠍子を今でも懐かしく思い出します。

酒はやはり白酒がオススメ

 北京の酒といえばやはり「白酒(バイジョウ)」です。ちなみに中国では、紹興酒はほとんど飲まれておらず、基本的には「酒=白酒」となります。アルコール度数が約40~70度まである蒸留酒で、小さなグラスでウオトカのようにクイッと喉で味わうお酒です。これがまた、中華料理や羊肉料理と相性が抜群!もともと、漢方的観点から見ると、羊肉は体を温める食材とされていますが、白酒を合わせると、さらにお腹の中からぽかぽかと暖かくなってきます。

 この冬、体を温める羊肉を骨ごと味わえる羊蠍子をぜひ経験してみてください。ただし、白酒は後で酔いが回るお酒なので、飲み過ぎにはご注意を……。

スパイシーな「麻辣濃厚スープ」と白湯系の「濃厚スープ」の2つが選べる。2つ同時に味わえる「鴛鴦鍋」は2,700円(2人前)。追加の羊肉の薄切りは800円。
スパイシーな「麻辣濃厚スープ」と白湯系の「濃厚スープ」の2つが選べる。2つ同時に味わえる「鴛鴦鍋」は2,700円(2人前)。追加の羊肉の薄切りは800円。

羊齧協会のひとくち羊メモ

羊肉はいま、消費者主導底上げ型ブームの真っ最中!

 以前はジンギスカンが主導していた羊肉ブームも、最近はジンギスカンやラムチョップのみならず、多種多様な料理が味わえるようになりました。これは、ひと昔前に広告代理店などが仕掛けたジンギスカンのような“料理主導型ブーム”ではなく、素材としての「羊肉」を楽しむことを求める、消費者が引っ張る“底上げ型ブーム”が起こっているから。
 それを裏付けるように、首都圏を中心に、中華、イタリアン、フレンチ、インド料理など各国料理に加え、居酒屋、和食や創作料理など、今まで羊肉があまり見られなかったレストランでも羊肉料理が増えています。

●SHOP INFO

店名:老北京 火鍋料理 蝎子王(しゃしおう)

住:東京都新宿区大久保1-9-17 寿ビル B1F
TEL:03-3207-2215
営:17:00~24:30(L.O.24:00)
休:なし

●プロフィール

取材・文/菊池一弘

羊齧協会主席。羊肉を常食する岩手県遠野市出身の父の影響で羊肉料理に親しんで育つ。
北京留学中に現地の味に触れたことでその魅力に開眼し、羊好きの消費者団体「羊齧協会」を結成。本業は、コミュニュケーションデザインのプロとして、アドバイザー業務を地方自治体や大学、企業などと行う。
http://hitujikajiri.com/