【自然派ワイン最前線】「Le cabaret」坪田泰弘氏×「wine stand waltz」大山恭弘氏【仏・ヴァンナチュールの旅】

流行り廃りで終わらない、フランスという国の魅力

坪田 大山さんは何度もパリに行っているけど、ここ10年くらいでワインに関して変わったなと感じたことってある?

大山 フランスってもともとワイン大国だし、小さな変化はもちろんあるけど、10年くらいのタームではそれほど大きく変わったという印象はないですね。ざっくりいえば「ル・バラタン」も「ヴェール・ヴォレ」も相変わらず人気があるし。

坪田 確かに。「ヴェール・ヴォレ」もお店が広くなってスタッフも入れ替わったりしていて“変わった”という人もいるけど、僕はそれほど変わったと思わなかったな。変わったといえるのは、ヴァンナチュールがより日常的に楽しまれるようになったことくらい。昔は一部の人が集まって熱狂している感じだったけど、今はもう世界中と繋がっている。パリのレストランやワインバーも、僕たちを含め外国人だらけだよね。

「ヴェール・ヴォレ」にて

「ヴェール・ヴォレ」にて

大山 たまたまサロンの時期と重なったからかもしれないけどね。ただ、ヴァンナチュールは世界中で繋がっているのは東京にいても感じます。

坪田 そうだね、大山さんの店にも外国人のお客さんが増えているし、うちの店もそう。

大山 逆にパリはここ数年サードウェーヴ・コーヒーの波が来ているけど、そういうのは日本の方が早かったりするし。

坪田 逆にその感じがフランスっぽいのかな。文化としての軸がしっかりあるから、新しいものが入り込むのに他の都市より時間がかかる印象。日本はその逆で、とにかくサイクルが速い。

大山 ただ、そうは言ってもパリも英語が通じる普通の国になってきて、だんだん変わってきているなあと実感してます。世界的な都市ってどこも似てきているのは仕方ないことかもしれないけど、個人的にちょっとさびしいよね。コンサバティブなところがパリの良さだったと思うので。そういう意味では、ロワールの小さな街・ソミュールで普通のカフェに入ったでしょ。入口で煙草を売ってるような。あそこ、面白くなかった?

坪田 地元の常連さんがカードゲームをやりながら立ち飲みしていて。パリだとエスプレッソやビール、パスティスあたりを飲むような光景なんだけど、オジサンたち、全員小さなグラスでロゼを飲んでてね。それが凄くロワールっぽかった。

大山 オシャレ要素ゼロの店だったから写真もアップしなかったけど(笑)。

坪田 でもなんだかカッコよかったな。あれがフランスなんだよね。

小さなグラスでロゼワインを飲みながらカードゲームに興じる地元のオジサンたち(ソミュールのカフェにて)。

小さなグラスでロゼワインを飲みながらカードゲームに興じる地元のオジサンたち(ソミュールのカフェにて)。

(撮影◎大山恭弘(wine stand waltz))