【特集】ぬくぬくとほろ酔いたい、東京・至極の燗酒を愉しませる5軒

『29ロティ』 @大塚 

東京・大塚

生ハムやチーズを燗酒でという驚き

「燗にする…温められた日本酒を口に運ぶと、確かにアルコール感がやや強くなります。しかし料理と一緒に口含んだときの、食べ物の香りの立ち方、双方の旨みの広がり方は感動的。酒を単体で飲むなら冷酒も美味しいけれど、料理を主体にして楽しむなら、やっぱり燗酒です」(店主・江澤氏)。

 その美味しさは刺身や煮物といった和食に限ったことではない。チーズや写真にある生ハムをはじめ、ポテトグラタンや羊のクミン焼といった、ワインで楽しむのがセオリーと思っていた料理まで、実に守備範囲が広い。今でこそ当たり前になってきている、そんな洋風の肴と燗酒の組み合わせを先駆けて実践してきたのが、この江澤さんだ。「いや、そんなに研究を重ねたとかではなく、日本酒には旨み成分が多いし、チーズやハムと同じ発酵食品だしと、試してみたら旨かったというのが近いかな(笑)」

 スタートはそうでも、生ハムを極薄にスライスすることで燗酒の熱で脂が溶けやすくしたり、グラタンに使うマッシュポテトを出汁で煮てみたりと、より燗酒に合うような工夫も随所に加えていき、今がある。

 食べたい料理を頼み、燗酒は「これに合うものをください」の注文だけでいい。あとは、どんなお酒を出してくれるのか期待を膨らませるだけ。料理の味を最大限引き出す、極旨の燗酒を提供してくれるはずだ。


29ロティ

 グアンチャーレ、トスカーナのサラミ、24ヶ月熟成のプロシュート・ディ・パルマの乗った「生ハム3種盛り合わせ」1800円。出汁で煮たポテトをマッシュし、ラクレットを乗せて焼いただけ。シンプルながら口に含むと程よい塩気と旨みがブワッと広がる「ポテトグラタン」1200円、やわらかなラムを使い、スパイスが利いた「羊のクミン焼」1500円。どれも洋の酒肴だが、日本酒を燗にすることでことのほか合う。一度体験すべきペアリングだ。


29ロティ

左から梅を感じさせる酸味が魅力の「梅津の生酉元」、冷酒でもよし、燗にしてもよしの「赤とんぼ」、軽やかな口当たりながら芳醇な味わいとコクのある「十旭日(じゅうじあさひ) ひやおろし」。燗酒は正1合で850円~。ほかに「竹鶴」「玉川」といった日本酒が揃う。スライサーに改良を加え、生ハムなどは燗酒の温度で溶けるように極薄にして供することが可能に。

●SHOP INFO

29ロティ

店名:29ロティ
店主・江澤雅俊氏

住:東京都豊島区南大塚1-23-8
TEL:03-6902-1294
営:18:00~24:00
休:水
予算/5000円~ 個室/なし カード/不可
※2階は要予約でジビエの焼肉や鍋が楽しめる。

(撮影◎宮城夏子 取材・文◎編集部)