ホテルのバーで堪能する一期一会の「抹茶カクテル」とは？

京都 和束茶フェア（6月30日まで）

　「夏も近づく八十八夜」のフレーズでおなじみの唱歌「茶摘」。タイトルそのままに初夏の茶摘みの風景が歌われている。八十八夜は立春から数えて88日目のこと。この日の前後に摘み取られたフレッシュなお茶が出回るのはちょうどこの時期。

　現在「リーガロイヤルホテル東京」では、新茶のシーズンに合わせて「京都 和束茶フェア」を開催中だ。宇治茶の主産地として古い歴史を持つ和束茶（わづかちゃ）を使ったスイーツ＆カクテルが楽しめるフェアも今年で12回目を迎える。

　「ガーデンラウンジ」およびテイクアウト＆ギフトショップ「メリッサ」では和束産の抹茶、緑茶、ほうじ茶を使ったスイーツ、「セラーバー」では抹茶を使ったカクテル2種を提供する。

　スイーツかカクテルか。3種それぞれのお茶の味わいが楽しめるデザートプレートも捨てがたいが、今回は抹茶カクテル狙いで「セラーバー」へ向かってみることに。

　日頃カクテルをたしなむ向きであれば、抹茶のカクテルと聞いてもさほど珍しくはないだろう。抹茶カクテルというと、抹茶リキュールや抹茶フレーバーのシロップを用いた、どちらかというと日本をイメージさせるカクテルが少なくない。加えて、昨今はあちらこちらで多彩な抹茶スイーツを見かける。となると、デザートを意識した甘いカクテルが登場するのではと勝手に思い込んでいたが、どうやらそうではなさそうだ。

　「セラーバー」のHBA認定シニアバーテンダー兼マネージャーの三輪浩二氏に話を伺った。

—　今フェアの抹茶カクテル2種。「Green Lady」「利休」ともに辛口ですね。

「例年、当フェアでは抹茶を使ったスイートなデザートカクテルを提供してきました。しっかりとした甘味のあるカクテルは食後のデザート感覚で味わっていただけますが、やはり女性向けのイメージが強いようです。今年は男性にも気兼ねなくご注文いただけるようなものを意識してドライな味わいに仕上げています。もちろん、女性のお客さまにもぜひ味わっていただきたいですね」

—　まずは「Green Lady」。ホワイトレディならぬグリーンレディとはシャレています。

「こちらはホワイトレディをアレンジしたジンベースのカクテルです。和束産の抹茶のほろ苦さにレモンの酸味を加えることで、さっぱりと爽やかな味わいになっています。使用しているジンはビーフィーター24。このジンの香味のベースとなるボタニカルには日本の煎茶も使用しているため、抹茶との相性は抜群です」

—　グラスはスノースタイル。お塩と抹茶！　一瞬、抹茶塩を想像してしまいました。

「こちらにはミネラル分を多く含み、結晶が大きく、マイルドな味わいが特徴のマルガリータソルトという塩を使用してます。マルガリータとあるようにカクテルにとても適しており、この塩のアクセントが素材の甘味を引き出してくれます」

—　そして「利休」。茶道のお作法をまねて、ついグラスをまわしてかしこまっていただきたくなります。

「ロックグラスでご提供する”利休”のベースは白州です。日本を代表するシングルモルトウイスキーに和束産の抹茶とコアントローを加えました。爽やかで清々しいオレンジの香り、そして抹茶の苦味を楽しんでいただける一杯です。かしこまらずにどうぞ」

　創意に満ちた抹茶カクテル2種。フェアでしか味わえない一期一会のカクテル。いや、一フェア一会のカクテルだ。いつしかバーテンダーの所作が茶道のお点前と重なる。おもむろに抹茶カクテルを差し出されると、茶室に招かれた客人の気分である。「大変結構なカクテルで…」。カウンター越しのバーテンダーに利休を見たような気がしたのは決して酔っていたからではない、そう思いたい。