お酒はときどき、蒲田切子のぐい飲みで。【酒器も肴のうち】

お酒をつぐ器、お酒を飲む器。酒器に思いを巡らせると、気になってくるあの人のお気に入りやコレクション、あのお店のセレクション。酒器を愛でて一献傾けるのが好きなライターによる酒器折々、酒器こもごも。

お酒はときどきあ、蒲田切子のぐい飲みで。【酒器も肴のうち】
食楽web

『酒器も肴のうち』第22献にご登場いただいたのはクラフトギャラリー「アトリエ木里(きり)」を主宰する鈴木絵里さん。食卓にお酒が登場するのは稀とのことでしたが、えっ! こんなに酒器があるじゃないですか。うひょひょ、肴だ、肴づくしだ。それではさっそく酒器トーークとまいりましょう。

「展示会がらみや作家さんとのご縁で買い求めたものが多いですね。作家さんのことを知るために個展などに出向きますが、わりと小ぶりな作品を手にしている気がします。となると、ぐい飲みサイズのものになるんでしょうね」

 ご紹介するのはほんの一部だが、陶磁器とガラスの酒器がバラエティに富んでいる。ただ、いかにも酒呑みが好みそうなというより、どこかアート展の趣き。眺めているだけでワクワクする。おおよそ筆者の知る限りの居酒屋では出てこないだろうなと思いつつ。そして、なにか言いたげにこちらをじーっと見ている猫。猫好きのみなさん、気になるでしょ。犬派の筆者も無意識のうちに最初に手にしていました。

「外でお酒をいただくことはときどきあります。日本酒が好きな仲間がいて、おすすめされるがままです。お家ではほとんど嗜まないのですが、そういえば先日、息子夫婦が遊びにきてお鍋を囲んだときにちょっとだけいただいたかしら。

 日本酒はフルーティな味わいのものが美味しく感じます。口がお子さまなんですよ。お酒飲みではないので偉そうなことは言えないですが(笑)、酒器というものが存在するからなのか、日本酒をいただくって趣きがありますよね」

醸造の専門家と共同開発した冷酒杯“杜康の玻璃(とこうのはり)”(右奥)。一目惚れしたというqualia-glassworksのグラス(左手前)。
醸造の専門家と共同開発した冷酒杯“杜康の玻璃(とこうのはり)”(右奥)。一目惚れしたというqualia-glassworksのグラス(左手前)。

「お酒はガラスのもので飲むのが好きです。日本酒のときは蒲田切子のぐい飲み。これは口造りが外側に反っていて、口に触れる感じが心地よくて気に入っています。ちなみにビールのときはこのグラスと決めています(上の画像の左手前)。おつきあいのある滋賀の「ギャラリーマンマミーア」さんを訪れたときに出会って一目惚れでした」

 マンマミーア! 筆者が訪ねたい場所のひとつだ。パティスリー&カフェもあり、いつの日かと強く思っている。筆者の前のめりな食いつきで酒器トーークは脱線。鈴木さんがマンマミーアさんの冊子をお持ちだというので、図々しくもお借りすることに。

 さて、鈴木さんのお気に入りだという蒲田切子のぐい飲みの話の続き。ご存知のない方のために、ちょっとだけ説明すると、蒲田切子は大正から昭和初期に東京・大田区蒲田で盛んだったモダンなものづくりのスピリットと江戸切子の伝統技術を融合させて現代に甦らせた「フォレスト」のオリジナルブランド。アトリエ木里でも企画展を開催している。

「蒲田切子の魅力をたくさんの方に知っていただきたいですね。醸造の専門家と共同開発した“杜康の玻璃(とこうのはり)”という冷酒杯もあり、これでお酒をいただくと確かに美味しく感じる気がします。ふふ(笑)」。

(※杜康(とこう)とは古代中国の酒造りの神様の名前で、玻璃(はり)は古代のガラスの呼び名)

 そう言われると是が非でもと思う。日本酒を美味しく飲むためのグラスは多方面で開発されていると聞くが、同じ大田区民として、そして日本酒好きとして”杜康の玻璃”と蒲田切子についてはいずれ改めてご紹介したい。

 それでは今週はこのへんで。来週も引き続き、鈴木さんと酒器トーーク。このまま終わったら猫好きが黙っちゃいないという気もしますし。

【酒器FILE 016】 愛用者:鈴木絵里(「アトリエ木里」主宰) *口径65mm *高さ42mm *容量80cc *重量62g
【酒器FILE 016】
愛用者:鈴木絵里(「アトリエ木里」主宰)
*口径65mm *高さ42mm *容量80cc *重量62g

●DATA

アトリエ木里

アトリエ木里

クラフトギャラリーとして、生活で使えるものや手仕事のよさが伝わる作品の企画展を中心に、近年は絵画展なども積極的に開催する。クラフト作家自らがレクチャーするワークショップも行う。4人の陶芸家(門脇陽子、小林加代子、酒井泉、シマムラヒカリ/写真)と1人のガラス作家(アキノヨーコ)による「小皿・豆皿で楽しむ秋の食卓展」が11月18日からスタート。(11月26日まで。※22日休廊)

●著者プロフィール

取材・文/笹森ゆうみ

ライター。蕎麦が好きで蕎麦屋に通っているうちに日本酒に目覚め、同時にそば猪口と酒器の魅力にとりつかれる。お酒、茶道、着物、手仕事、現代アートなど、趣味と暮らしに特化したコンテンツを得意とする。