“街の食堂”を目指す気鋭のフレンチレストラン「merle」〈前編〉【房総food記】

名物「メンチカツ」は必食!精肉店の息子として挑んだ自信作

小籠包をイメージしたというお店の看板料理「メンチカツ」1個350円は、サクサクの衣を割ると、牛肉の中に練りこんだスープ(香味野菜と牛肉でとった出汁)がジュワーっと溢れ出す。
小籠包をイメージしたというお店の看板料理「メンチカツ」1個350円は、サクサクの衣を割ると、牛肉の中に練りこんだスープ(香味野菜と牛肉でとった出汁)がジュワーっと溢れ出す。

 外房・茂原の精肉店で生まれ育った山中シェフは、小学生の頃にはすでに「将来立派な飲食店を経営する」と作文に書いたほどの、筋金入りの食いしん坊。そのシェフが、3年間の試行錯誤を経て生み出したのが、店のスペシャリテ「メンチカツ」です。

 通常のメンチカツは、あえて脂身の多い部分を使い、その脂が揚げ油の中で溶けることによって肉汁になるものが多いですが、「merle」では胃もたれせずに軽く食べられるように、旨味の強い赤身肉を使用し、肉の香りを引き立てるために時間をかけて香味野菜と肉から抽出したフランス料理の「フォン」(出汁)をしっかり練り込んでいます。

 それをゆっくりじっくり揚げることで油から圧力がかかり、ゆるく柔らかだった生地が焼き締められ、ぎゅっと凝縮。そのため、熱々の出来たてを噛み締めると、まるで小籠包のように一気に肉汁が溢れます。メンチカツという精肉店の人気者を、フレンチの技でさらにスーパーアイドルにしてしまったような、シェフのこれまでの経歴が織り込まれた看板メニュー。その驚きとおいしさは、ぜひお店で体験してみてください。

 “誰もがおいしいものを楽しめる場”をつくるため、細部まで丁寧な仕事を続ける「merle」。ワイン&おいしい物好きならぜひわが町にあってほしいと願う、日常遣い店の理想形のように思えます。尽きない魅力の続きは、次回の後編で。店の味を自宅で楽しめるギフト商品や、秋冬だけのお楽しみなどをご紹介します。

メンチカツは「熱々の状態でかぶりついてもらいたい」と、袋に入れて味わうスタイル。添えられているのは自家製のピーナッツ塩「ピーナッツデュカ」。中東のミックススパイス「デュカ」をヒントに、八街産落花生を砕いたものに、フランス・ゲランドの塩と様々なスパイスをブレンドした。店頭でも販売中。
メンチカツは「熱々の状態でかぶりついてもらいたい」と、袋に入れて味わうスタイル。添えられているのは自家製のピーナッツ塩「ピーナッツデュカ」。中東のミックススパイス「デュカ」をヒントに、八街産落花生を砕いたものに、フランス・ゲランドの塩と様々なスパイスをブレンドした。店頭でも販売中。
共にソムリエ資格保持者のおしどりオーナー夫婦、山中学さん・亜美(つぐみ)さん。山中シェフは、以前当コラムで紹介した長南町のピッツェリア「ストーリア」の店主とははとこ同士で、偶然同じ年に店を開いた。米国・カリフォルニアに留学経験のある亜美さんは、現地でワインの魅力に開眼。ワイン以外に、木更津のブルワリー「ソングバード」のクラフトビールも提供するなど、少数生産で真摯な酒造りを展開する生産者のものを積極的に取り入れている。山中シェフも「お酒は妻におまかせです」と、愛妻“つーちゃん”に全幅の信頼を寄せる。
共にソムリエ資格保持者のおしどりオーナー夫婦、山中学さん・亜美(つぐみ)さん。山中シェフは、以前当コラムで紹介した長南町のピッツェリア「ストーリア」の店主とははとこ同士で、偶然同じ年に店を開いた。米国・カリフォルニアに留学経験のある亜美さんは、現地でワインの魅力に開眼。ワイン以外に、木更津のブルワリー「ソングバード」のクラフトビールも提供するなど、少数生産で真摯な酒造りを展開する生産者のものを積極的に取り入れている。山中シェフも「お酒は妻におまかせです」と、愛妻“つーちゃん”に全幅の信頼を寄せる。
JR外房線・永田駅からすぐ、駅前通りから1本裏に入った住宅街の中にある「merle」。店名はフランス語でクロツグミ(黒鶫)の意。赤ワイン品種の黒ぶどうの一つ・メルロの実を好む鳥とされ、「ワインとおいしいもの好きな人が集まる場所になるように」と命名。亜美(つぐみ)さんの名前にもかけている。
JR外房線・永田駅からすぐ、駅前通りから1本裏に入った住宅街の中にある「merle」。店名はフランス語でクロツグミ(黒鶫)の意。赤ワイン品種の黒ぶどうの一つ・メルロの実を好む鳥とされ、「ワインとおいしいもの好きな人が集まる場所になるように」と命名。亜美(つぐみ)さんの名前にもかけている。

●SHOP INFO

店名:merle(メルル)

住:千葉県大網白里市ながた野1-7-7
TEL:090-6479-2929
営:11:30~14:00(L.O.) 18:00~21:00(L.O.) 日・祝12:00~20:30(L.O.)
休:第2・4水曜&木曜
一人あたり予算:ランチ(洋食ランチセット2,000円~、おまかせコース4,000円~)、ディナー3,600円/4,200円/5,000円。
カード:使用不可
駐車場:5台(無料)
※価格はすべて税別表記。

●著者プロフィール

白井いち恵

千葉市育ち&在住の編集者・ライター。『千葉の本』『千葉の本2』(京阪神エルマガジン社)を手がけ、出身地・千葉県の知られざるおいしい&楽しいを大特集した。路線バス好きでもあり、著書に『東京バス散歩』(同上)。