ワインのような日本酒「afs」を造る千葉の「木戸泉酒造」とは?【古酒店主の蔵元探訪】

東京・杉並の古酒・熟成酒専門店「いにしえ酒店」の店主が、今注目すべき日本酒、古酒・醸造酒を紹介するとともに、その美味しさの秘訣を探求、蔵元を訪ねます。今回は、千葉・九十九里浜の「木戸泉酒造」へ。

ワインのような日本酒「afs」を造る千葉の「木戸泉酒造」とは?【古酒店主の蔵元探訪】
「afs原酒」1,460円(税込) | 食楽web

古くて新しい、不思議な日本酒の魅力

 ワイングラスに注がれた様子を見て、また一口味わってみて、このお酒が日本酒だと気づく人がどれほどいるだろうか。

 しかし、これは白ワインではなく、れっきとした日本酒。木戸泉酒造が造る、純米酒「afs(アフス)」である。

 ヨーグルトのような乳製品の香りと麹の優しく甘い香りはどこか懐かしいチェルシーヨーグルトのようである。口に含むと厚みのある豊かな酸味が広がり、苦味と甘味が原材料である米の旨味を引き立たせ濃醇な余韻が続く。ボトルのデザインもそうだが、「afs」は、バターやスパイスを使う洋食にもとても合うのだ。

左から、「afsスパークリング」1,140円、「afs生」1,190円、「afs原酒」1,460円、「アフスオールドリザーブ」4,400円、「低温熟成 奏」1,620円(全て税込)
左から、「afsスパークリング」1,140円、「afs生」1,190円、「afs原酒」1,460円、「アフスオールドリザーブ」4,400円、「低温熟成 奏」1,620円(全て税込)

 木戸泉酒造のお酒は飲む人の感覚を大切にしている。そのため、日本酒度や酸度といった味の先入観を与える情報は記載されていない。そのかわり、飲む人の好みに合うよう、フレッシュで軽快に飲める生、「afs」らしさを堪能できる原酒、季節感のあるスパークリング、長期間熟成させたオールドリザーブや原料米を変えて長期熟成させた奏とラインナップも幅広い。

 この中でも私がもっとも注目するのは、1970年代と2000年代のAFSをブレンドした古酒、「アフスオールドリザーブ」である。

 少し焦げたメープルシロップ、シェリー酒、熟したラム酒、木樽、と複雑で奥行きのある香りは飲む人によって感じ方が様々。熟成によりafs独特の酸味は丸みを帯び、とろっとした甘みに深い苦味が調和する。余韻は長く、鼻に抜けるスパイシーな香りは濃い料理との相性が良い。そして、味わいにも増して、この個性豊かな酒を40年以上も前に作り始めたのだから、その歴史を感じながら楽しんで頂きたいお酒なのだ。