地元産の米と水が育む「PIZZA storia」の天然酵母のピッツァ。【房総food記】

千葉在住ライターが、東京の友人に自慢したい、“ピーナッツだけじゃない”県内のおいしいものを気ままに紹介。房総を拠点にした「食」にまつわるあらゆるものを見つめた、飲んで・食べて・知る千葉の風土&food記です。

緑の風吹く里山の窯焼きピッツェリアへ。

(千葉県長生郡長南町)

緑の風吹く天然酵母の窯焼きピッツェリア【房総food記】
白い外壁と緑一面の田園地帯の対比が美しい「PIZZA storia」は、店主・古山喜祥(ふるやま・よしあき)さんの実家の畑だった場所に佇む。写真手前の敷地には、春になれば菜の花畑が、秋にはコスモス畑が出現する。 | 食楽web

 房総をドライブしていると、偶然通りかかった道で素敵な佇まいの空間を発見することが多く、運転中も気が抜けません。今回訪ねるこちらも、そんな風にして見つけた一軒です。

 場所は、房総半島のほぼ中央部にある長南町(ちょうなんまち)。聞き慣れない地名かもしれませんが、実は歴史あるエリアです。市原市、茂原市、睦沢町、大多喜町と接し、中世には「庁南城」(長南城)というお城が存在し、江戸時代には江戸と城下町・大多喜を結ぶ街道「房総中往還」(大多喜街道)の宿場町としても栄えました。古くから稲作が中心で、今も田園地帯が広がります。

 そんな長南町の兼業農家で生まれ育ったピッツァ職人、古山喜祥(ふるやま・よしあき)さんのお店が、「PIZZA storia」(ピッツァ ストーリア)です。

 緑豊かなこの場所で、実家で作るお米や野菜を食べて、のびのび育った古山さん。以前から、長南町の産物を生かしたお店を開き、地元に人を呼びたいと考えていたそうです。
「ピッツァを志したのには、理由があるんです。ここでしか食べられないものを出すお店をやろうと考えた時に、特産のおいしいお米を生かした天然酵母を使って生地を作るピッツァはどうだろうと。トッピングの具材にも産物を生かすことができるし、ピッツァなら年配の人にもわかりやすいので、地元の人にも日常使いの店としても受け入れてもらえるんじゃないかと思って」

 都内のイタリア料理店で10年ほど働いた後、日本のナポリピッツァの先駆けとされる人気店「イゾラ」で3年間ピッツァ作りの修業を積んだ古山さん。東京での料理修業の傍ら、ビジネス書を読み漁り、独学で経営について勉強。そして2016年3月、妻・美穂子さんとともに満を辞して自分の店をオープンしました。

 素材にもこだわり、ピッツァ生地の命ともいえる小麦には、北海道上富良野産の「はるゆたか」を100%使用しています。
「栽培している生産者は、小さな農家さんが集まって作っている団体なんですが、ここの理念に共鳴して使うようになりました。小麦は、別の品種とブレンドされてしまうことが多いそうなんですが、ここの団体の小麦は自分たちの作物を大切にしていて、ブレンドなしで100%「はるゆたか」を出荷しているんです。自分たちが作ったものに愛着と責任を持っているのが素敵ですよね」
 この小麦に、実家のお米を使った天然酵母を加えると、甘みがあって、モチモチの生地に仕上がるのだといいます。

緑の風吹く天然酵母の窯焼きピッツェリア【房総food記】
店主の古山さんと妻・美穂子さん。古山さんが作るピッツァと、美穂子さんの細やかで的確な接客が魅力だ。昨年3月のオープンから1年と少し、「常連さんも増えてきて、とても嬉しく思っています」と美穂子さん。
緑の風吹く天然酵母の窯焼きピッツェリア【房総food記】
こちらが長南町産の米麹と水から作った天然酵母。米麹は、古山さんの実家が栽培しているお米を、幼い頃から知り合いの地元の麹屋さんにお願いして麹にしてもらっている。「長南町の土壌は粘土質で保湿性が高いらしく、お米の味もいいんですよ」と古山さん。甘みのある麹なので、この天然酵母を用いると、ピッツァの生地にコクが出るという。
緑の風吹く天然酵母の窯焼きピッツェリア【房総food記】
生地に使う小麦は、北海道上富良野産「はるゆたか」。時折、美穂子さんと一緒に現地の生産者の元へ足を運ぶなど、原料や農家に対する愛情も深い。
緑の風吹く天然酵母の窯焼きピッツェリア【房総food記】
「ピッツァは窯の床の温度が一番大切。常に400℃くらいになるようにしています」。窯の火で焼くのではなく、炎で温めた床から出る放射熱で焼き上げるのだという。