初夏の休日は「ソングバード」のビールとともに。【房総food記】

風土を感じられる
ビールづくりを目指して。

 この日の取材中も、シャッターが開いていると見るや、続々とお客さんが集まってくるのが印象的でした。

「うちは週末だけじゃなくて、シャッターが開いていたら営業中なので」とモナミさんが微笑みます。

 犬の散歩中に一杯飲んでいく常連さんや、顔を見に寄ってくれるご近所さんなども多いとか。そんなおなじみさんを迎えながら、ふとつぶやいた中島さんの言葉が印象的でした。

「お酒って、急いではつくれないものだけど、都会でつくっていたらもしかしたら無理して急いでつくってしまっていたかもしれない。この町で、じっくりビールづくりに集中できるのはありがたいなって思います」

初夏の休日は「ソングバード」のビールとともに。【房総food記02】

角打ちスペースの常連だというアメリカ人男性は、近隣に住む英語の先生だとか。「今日は学校もう終わったの?」「そうだよ、だから寄ってみた(笑)」。気心の知れた会話がほほえましい。

初夏の休日は「ソングバード」のビールとともに。【房総food記02】

懇意の農家・荒井さん夫妻は、自家製野菜を届けに訪問。「荒井さんには、ビールづくりの過程で出る麦芽のかすを引き取ってもらっているんですが、それを鶏の餌にして養鶏をされているんです。その卵がすっごくおいしい!」(中島さん)。

 初夏を迎える「ソングバード」には、きっとおろしたての夏のビールが並んでいるはず。

 お向かいさんの夏みかんと木更津産のしょうがでこしらえた「夏みかんとしょうが」に、スパイシーなライ麦麦芽入りの「グライゼット」、さらには夏の日に飲むアイスコーヒーのイメージでつくったという炭酸控えめの黒ビール「サマーポーター」など。どうにもそそられる銘柄ばかりです。

 「いつか家の裏にあるビワの木の実を使ったビールもつくってみたいな」と中島さんが言えば、「いすみ市にはチーズ工房がたくさんあるから、うちのビールを使って、ビールウォッシュのチーズをつくってもらえないかな」とモナミさん。ああ、それ、たまりませんね……。

 房総の土地の豊かさをビールという魅力に変換させる、「ソングバード」の今後が、楽しみでなりません。

 というわけで、もう一杯、お代わりくださーい!!

初夏の休日は「ソングバード」のビールとともに。【房総food記02】

どうです、この黄金色! 看板商品の「ブロンド」(アルコール度数5%)は、口当たりが軽くて香りもよく、ゴクゴクいけてしまう。「ソングバード」のビールを知るにはオススメの一杯。

初夏の休日は「ソングバード」のビールとともに。【房総food記02】

角打ちスペースでのフード提供はないが、隣接するイタリアンレストラン「アーリオ」から出前を取ることが可能(なんとメニューも常備!)。中島さん夫妻のオススメは、「ブロンド」にとても合うという自家製ハーブ鶏とベビーリーフのピッツァ。反対に、「アーリオ」にビールを出前することもできるそう。

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というわけで、せっかくなので出前を注文。熱々のチーズにたっぷりのベビーリーフとハーブ鶏の旨味が、口当たりの軽い「ブロンド」と好相性。クリスピー生地なので背徳感も少なくペロリといける。昼酒万歳!

初夏の休日は「ソングバード」のビールとともに。【房総food記02】

近くには木更津駅行きのバスの停留所も。

初夏の休日は「ソングバード」のビールとともに。【房総food記02】

【おまけ】
 上総清川駅前の踏切をわたって「ソングバード」に来る途中には、モナミさんオススメの手づくりほうきの名店「ほうきや」がある。実は、木更津市のお隣・袖ケ浦市はかつてのほうき草の一大産地。その貴重な県産ほうき草を使い、今も店内で1本ずつ手作業でつくられるほうきは、どれも丈夫で美しくお手頃価格。帰りの久留里線を待つ間に、ぜひ寄ってみて。

●SHOP INFO

店名:ソングバード

住:千葉県木更津市清川1-14-12
TEL:なし
営:12:00~19:00
休:月~木曜(その他不定休あり)
駐車場:3台(無料)
クレジットカード:使用不可
アクセス:JR久留里線・上総清川駅から徒歩5分。都内からは東京湾アクアライン経由で。
※店のHP(http://songbirdbeer.blogspot.jp/)から通販も可能(「web shop」をクリック)。新銘柄のリリース情報などもこまめにチェックして。
※「ソングバード」のビールは、県内では「ビアオクロック」(千葉市)、都内では「ビアバール丸々」(御徒町)、「WIZ craft beer and food」(神田淡路町)、「Hemel」(渋谷)などで飲むことができる。

●著者プロフィール

白井いち恵

千葉市育ち&在住の編集者・ライター。『千葉の本』『千葉の本2』(京阪神エルマガジン社)を手がけ、出身地・千葉県の知られざるおいしい&楽しいを大特集した。路線バス好きでもあり、著書に『東京バス散歩』(同上)。房総のおすすめ路線は、レトロな車両が現役で走る天羽日東バス。