07話【コーヒープレス古今東西】コーヒープレスと豆の挽き方、のよい関係。

挽いた豆にお湯を注ぎ、時間が来たらレバーを押し下げる。そんな簡単ステップで珈琲豆の味わいが堪能できるコーヒープレス。家事の合間に、仕事の休憩に。初心者からプロまで使えるうえに、手間いらずで実用的。なのになぜか、知名度は今ひとつ。使えばきっと好きになる、愛すべきコーヒープレスの魅力をご紹介します。

07話【コーヒープレス古今東西】コーヒープレスと豆の挽き方、のよい関係。

食楽web

 先日、このコラムを読んだ友人からSNS経由で「コーヒープレスって便利なんですね。今度使ってみようかな」という嬉しいコメントをいただいた。

「ぜひぜひ! 粗挽きに挽いた豆とお湯さえあれば、4分で美味しいコーヒーが入るよ」とレスを入れたところ、返答の文面を見て、しまった!と我に返るはめに。

「そっか、コーヒー豆をプレス用に挽かなければいけないんですね」

 コーヒープレスの紹介をしておきながら、豆の挽き方にちゃんと触れていなかったなんて、まったくもって私の落ち度。ふだんペーパードリップや電動コーヒーメーカーを使っている人が、それぞれの器具に合わせて挽いた豆をそのままプレス式で使ってもおいしく淹れられないことを、声を大にして言わなければならない(遅くてすみません)。

 というのも、ペーパードリップ式や電動コーヒーメーカーで使う豆は、コーヒーショップはもちろん、コンビニやスーパーなどでも、あらかじめ細挽き~中細挽きと呼ばれる細かさで挽いてある豆が簡単に手に入る。しかし第3話(https://www.syokuraku-web.com/column/2615/)でお伝えしたとおり、挽いた豆に湯を注ぎ、約4分後に金属製のフィルターでぎゅっとプレスすることで、豆と液体を分離させるのがコーヒープレスの仕組み。紙よりも目の粗い金属フィルターでは、細挽き豆を漉しきれず、飲みにくい味になってしまうのだ。

 つまりプレス式を使うなら、中粗挽き~粗挽きの豆を用意する必要がある。もっと言えば、豆の種類や味わいの好みによって、どのくらいの粗さで挽くか使い分けたほうがおいしい……という話になるのだけれど、初めてプレス式を使うなら好みもなにも、飲んでみなければ分からないはず。もし豆を挽く道具「ミル」をお持ちなら話が早い。好きな豆を粗挽きと中粗挽き、それぞれで挽いて味の変化を比較してみればよいのだ。もちろん、ミルがなくても心配ない。豆の量り売りをしている店なら、たいてい好みの粗さに挽いてくれる。「コーヒープレスで淹れたいのですが」と言えば、お店の人が最もおすすめの粗さで用意してくれるはずだ。その場合「どの粗さで挽いたか」「なぜその粗さに挽いたのか」を聞いておこう。

 ミルがあってもなくても、いったんそのプロセスを通過すれば、次に購入するとき「この前〇〇という豆を粗挽きにしたが、もう少し苦みがある方が好みだった」など具体的に説明ができ、より好みに合いそうな豆&挽き方をおすすめしてもらいやすくなる。これを繰り返すほど、出会いは広がり知識も増える、という訳だ。

 加減が分かるまでは少々面倒に思えるかもしれない。でも、いったん好みの豆に出会えたら「湯を入れて4分待てばおいしいコーヒー」の特権が手に入る。しかもコーヒー豆は時間が経つほど味も落ちるし、挽いてしまえばことさら酸化しやすい。1日1杯飲めば一週間で十分に飲みきれる100gを目安に、こまめに購入するほうが利にも叶っている。

 散歩がてら「今日はどんな豆にしようかな」なんて、毎週探しに行くのも、意外に楽しいものだ。

●著者プロフィール

写真・文/木内アキ

北海道出身、東京在住。”オンナが楽しく暮らすこと”をテーマに、雑紙や書籍、ウェブなどで人・旅・暮らしにフォーカスした文章を執筆。プレスコーヒー歴7年。目標は「きちんとした自由人」。執筆活動の傍ら、夫と共に少数民族の手仕事雑貨を扱うアトリエショップ『ノマディックラフト』を運営中。
HP: http://take-root.jp/