08話【コーヒープレス古今東西】鮮度が落ちると分かっていても、豆を買い置きしたい時がある。

挽いた豆にお湯を注ぎ、時間が来たらレバーを押し下げる。そんな簡単ステップで珈琲豆の味わいが堪能できるコーヒープレス。家事の合間に、仕事の休憩に。初心者からプロまで使えるうえに、手間いらずで実用的。なのになぜか、知名度は今ひとつ。使えばきっと好きになる、愛すべきコーヒープレスの魅力をご紹介します。

08話【コーヒープレス古今東西】鮮度が落ちると分かっていても、豆を買い置きしたい時がある。

食楽web

 前回は、豆の挽き方に触れ「毎週、少量ずつ買って味を比べるとよい」などと書いてみたのだが。実際のところ、そこまでこまめに買いに行けない、近所に量り売りの豆屋がない、という人もいるだろう。特に、コーヒープレスのメリットとしてあげている「手軽さ」にアンテナが反応する人は、仕事や子育てなどで忙しく「休日は疲れて動きたくないよ」という気持ちかもしれない。

 おいしい豆を通販で届けてくれるコーヒーショップも最近は多数あるので、それについてはあらためてまとめたいと思う。まずは基本的な知識として、買った豆がすぐ飲めない場合でも、できるだけ鮮度を維持する保存方法を押さえておくのが便利かつ現実的だ。

 火を入れて焙煎するプロセスのイメージから、なんとなく長持ちしそうなコーヒー豆。しかし生鮮食品と同じで、時間が経つときっちり味が落ちていく。豆のまま常温で置いておくならば、だいたい1~2週間で飲みきれる量が目安、と言われている。挽いた状態の豆なら、豆よりも空気と接する面積が増える訳なので、香り成分も逃げれば酸化も進む。劣化はもっと早くなるのだ。

 手軽な方法としては、密閉容器に入れて冷凍庫に保存するのがかんたん。わざわざ専用の容器を買わなくても、スーパーで売っているチャック式ビニール袋に入れれば十分。むしろ冷凍室の場所を取らないので便利なくらいだ。淹れるときは使う分だけを袋から出し、軽く常温に戻してから抽出する。もちろん、冷凍したから味が落ちないわけではなく、劣化の進みを遅らせるだけだ。個人的な感覚だが、数か月冷凍した豆でも味わいは想像していたより保てるんだな、という印象。しかし長く冷凍するほど、香りが飛んでしまうのは避けられないように思う。

 せっかく豆から買うのだから、おいしいまま飲みたい。しかし、劣化に神経質になりすぎるのも疲れてしまう。いい状態で飲む努力もしつつ、理想の期間に飲みきれなければ「時間が経つとどう変化するのか、体感してみよう」くらいの鷹揚な気持ちでもよいじゃないか。ズボラな筆者はそう考えることにしている。

●著者プロフィール

写真・文/木内アキ

北海道出身、東京在住。”オンナが楽しく暮らすこと”をテーマに、雑紙や書籍、ウェブなどで人・旅・暮らしにフォーカスした文章を執筆。プレスコーヒー歴7年。目標は「きちんとした自由人」。執筆活動の傍ら、夫と共に少数民族の手仕事雑貨を扱うアトリエショップ『ノマディックラフト』を運営中。
HP: http://take-root.jp/