「千駄木腰塚」の自家製コンビーフ(千駄木)【1】【第7回小みやげネタ帖】

差し入れ以上、贈り物未満、アンダー1,500円のささやかな手みやげを“小みやげ(こみやげ)”と勝手に命名。気の置けない友人に、ちょっとしたお礼に。おいしくて財布に優しいうえに、もらった側もお返しいらずの気楽なアイテム。関西出身ライターが日常遣いする、テッパンの東京みやげをご紹介します。

ごはんもお酒もOK
みんなに喜ばれる名作コンビーフ

「千駄木腰塚」の自家製コンビーフ
旨みの詰まった繊維がほろほろとほぐれる自家製コンビーフは、400g1,782円(本店店頭価格)。3月17日より値上がりのため、1,500円をちょっと出るのはご勘弁を。添加物は必要最低限に抑えられている。| 食楽web

 谷中銀座にほど近い「千駄木腰塚」は、昭和24年創業の精肉店。店の名を世に知らしめたのが、13年前に誕生した自家製コンビーフだ。卵かけご飯にのせるとめっぽう旨いと口コミがじわじわ広がり、今や「千駄木腰塚=コンビーフ」と言われるまでに有名になった。

 店の2階で作るコンビーフは、塩漬けにした肩バラ肉を茹でて丁寧に手でほぐし、和牛のチチ脂を混ぜ合わせたもの。肩バラ肉の食感と牛肉の旨み、舌でとろけるあっさりとした和牛脂の調和がたまらない。

 そのままはもちろん、トーストにのせて焼いたり、マヨネーズと和えたりとアレンジ自在。広く知られるきっかけになった卵かけごはんにのせる人も多いが、店のおすすめは「熱々ごはんにのせてわさび醤油を少し」。シンプルなほうが肉本来の旨みを味わえるからとのこと。とまあ、ごはんもおつまみのOKの万能選手なのである。

 さて、精肉の話をしよう。ここの面白さは、何といっても真っ赤なショーケースだからだ。「千駄木腰塚」は東京食肉市場でも有数の取扱高を誇る仲卸業者であり、中間マージンがないため、レストランや高級焼肉店、百貨店などに卸す肉を良心価格で買えるというわけ。美しい牛肉がずらりと並ぶ様子は、圧巻の一言。「一番のお買い得は、A4、5の端肉を集めた霜降りの切り込みなんですよ」と羽生正太郎取締役がこっそり教えてくれた。

 ベテラン(勤務歴50年以上の人も!)や若手スタッフが丁寧に対応してくれ、対面販売の楽しさも十分。あれれ、手みやげを買いに来たはずなのに、晩ご飯の献立を考えている……。隣でつっかけ履きのおばあさんがすき焼き肉を3枚買っていった。贅沢な日常がここにある。

「千駄木腰塚」の自家製コンビーフ
ほぐしたコンビーフとわさびを熱々ご飯にのっけて醤油をちょろりとかけて召し上がれ。ギフトにもらってハマり、リピーターになる人も多いそう。
「千駄木腰塚」の自家製コンビーフ
肉質とボリュームに驚く。霜降り切り込み(100g702円)は仲卸業者ならではのお値打ち品。
バックヤードで切ったばかりの肉が店頭に並ぶ。前沢牛の販売指定店第1号店、松阪牛は4号店。
バックヤードで切ったばかりの肉が店頭に並ぶ。前沢牛の販売指定店第1号店、松阪牛は4号店。
「千駄木腰塚」の自家製コンビーフ
見るだけでも楽しい店内では、ご近所さんやわざわざやって来た人が真剣な表情で肉を選ぶ。週末はいっそう賑やかに。

●SHOP INFO

店名:千駄木腰塚

住:東京都文京区千駄木3-43-11
TEL:03-3823-0202
営:10:00~19:00
休:水曜
日持ち:コンビーフは製造1か月、開封後4~5日(冷蔵保存可)
地方発送:可
ほかに購入できる店:エキュート日暮里店、北千住マルイ店(3月17日オープン)
http://www.koshizuka.jp/

●著者プロフィール

森本亮子

編集・ライター。『東京の手みやげ』(京阪神エルマガジン社)など、手みやげ関連のムック・書籍や雑誌企画を多く手がける。レストランや酒場、肉などの食をメインに、おいしいものと街と人をこよなく愛する関西人。錦糸町在住。