香り高い「もんじゃ」は“遊び心”で生まれる
さて、この「煎餅もんじゃ」を生み出しているのは、同じ代々木八幡のポルトガル料理『クリスチアノ』や澁谷のタイ料理『パッポンキッチン』、赤坂のスペインバル『バレンシアナバル ブリーチョ』など人気店を次々生み出してきた佐藤幸二さんである。使っている具材や調味料、さらに仕込み法が多国籍な雰囲気である理由が少しわかってきた。
佐藤さんは、若い頃から浅草で「煎餅もんじゃ」を食べて育ってきた経験から、今回の店の着想を得たというが、こんな奇想天外な味の構成をどうやって考えているのだろうと思い、店先に立つ佐藤さんに直接聞いてみた。
「そう聞かれると、あまり深く考えていないんですよね。すごくこだわりがあるというわけでもなく、思いつき。ただ、使いたい具材や調味料が1つ2つあって、そこから味を構成していく場合と、最初に語呂のいいメニュー名を作ってしまい、それから味を組み立てていく場合もあります」と佐藤さん。
先の“石垣島もんじゃ”は、島胡椒「ヒバーチ」や泡盛漬けの島唐辛子「コーレーグースー」といった沖縄の調味料を使いたいことから構成されたメニュー。また、“渡る世間は鬼ばかり”の語呂が好きで、「築地宮川鶏ばかりもんじゃ」なんていうのもあったそうだ。「レモンじゃ」はまさに名前ありきだという。
「“もんじゃ”は、関西のソウルフードとして完成されているお好み焼きやたこ焼きと比べ、まだまだ開拓の余地がある。これまでのいろいろな経験を今、遊び心でアウトプットしている感じですね。だから、人気メニューになったら、あっさりやめて、新しいメニューを出してしまうみたいな感じなんです」
あまり多くを語らない話し下手(?)な佐藤さんに興味がどんどん湧くが、こちらもつられて“聞き下手”になってきた。そこで、最後に、「子どもの頃はどんな子だったんですか?」と聞いてみると、
「自分じゃ、あまりわからないっすよ。でも、鼻がやたらいいと言われていました」と教えてくれた。
なるほど、どおりで、ここの「もんじゃ」は、香りのインパクトがモーレツに強かったと、勝手ながら合点がいった。
(取材・文◎土原亜子)
●SHOP INFO
店名:『お惣菜と煎餅もんじゃ さとう』
住:東京都渋谷区富ヶ谷1-9-22 守友ビル 1F
TEL:03-6804-9703
営:[テイクアウト]8:00(惣菜10:00)~22:00
[奥座敷]12:00~14:30(L.O)、18:00~21:00(L.O)
休:月
HP:http://www.cristianos.jp/satou/