“淡麗辛口”な日本酒が好きなら一度は飲みたい「麒麟山酒造」とは?

“淡麗”を生み出すのに欠かせない貯蔵棟

 新潟の日本酒は、搾ったあとに数か月貯蔵し、酒質を安定させてから出荷するのが一般的です。これこそが、新潟のお酒の特徴である「淡麗」を生み出すのに欠かせない工程となっています。

 麒麟山酒造では、2016年7月に、「鳳凰蔵」と名付けられた貯蔵棟を建てたそうです。この貯蔵専用蔵では、3キロリットルから30キロリットルの6種類のタンクを用意し、製造量に合わせたタンクで貯蔵することが可能です。

タンクで最低3か月貯蔵してから瓶詰めの工程に移る。
タンクで最低3か月貯蔵してから瓶詰めの工程に移る。

 なぜ、さまざまな容量のタンクが必要なのかというと、少量の酒を大きなタンクで貯蔵すると、タンク内の空気が酒を酸化させてしまうから。そのため、製造量に見合ったタンクで貯蔵することが、おいしいお酒を作るうえで欠かせない条件となっているのです。

各タンクは5℃まで冷やせるようになっており、タンクごとに設定温度は異なる。
各タンクは5℃まで冷やせるようになっており、タンクごとに設定温度は異なる。

 また、各タンクは温度のコントロールが可能で、お酒の種類に合わせた適正な温度での管理が行えます。これも、部屋単位でしか温度を調整できなかったこれまでとは大きく異なる点です。

 もちろん、貯蔵のためだけの環境を構築するには大きな出費が必要でしたが、淡麗辛口なお酒を作ることを決めた同社にとって、こういった施設は必要不可欠な存在だったのです。

目指すのは地元の米100%で作ったお酒

 麒麟山酒造で使っている仕込み水は、常浪川の伏流水です。この水は硬度が低い軟水で、ミネラル分の勧誘率が低いため、すっきりとした淡麗なお酒を造るのに適しています。この水源を守るために、2010年からは常浪川源流の山々の森林再生活動も始めるなど、環境活動にも注力しているそうです。

経済輪の需要低迷や人手不足で、森林機能に必要な林が減少。そのため、2010年より水保全森づくり事業や、社員による植林調査を行っているそうだ。
経済林の需要低迷や人手不足で、森林機能に必要な林が減少。そのため、2010年より水保全森づくり事業や、社員による植林調査を行っているそうだ。

 また、同社では「地元産米100%のお酒を作る」という、ユニークな取り組みも行われています。「奥阿賀酒米研究会」という組織を20年前に立ち上げ、地元農家と積極的にコミュニケーションを図りながら、地元産の酒米の育成に取り組んでいるそうです。現在は9000俵近くの酒米を地元で栽培できるようになり、全体の80%を地元産の酒米で賄えるようになっています。今後3年以内に100%にするのが目標だそうです。

各田んぼには履歴書のように、栽培されている品種や敷地面積などが書かれた看板が立てられている。
各田んぼには履歴書のように、栽培されている品種や敷地面積などが書かれた看板が立てられている。

 齋藤社長は「いろんな地酒があっていいと思うが、地元の人が飲めないようなレアなお酒を“地酒”と呼んでいいのか。その土地で醸され、地元の人たちの生活に寄り添う酒こそが“地酒”だと考えている」と語っていました。

 地元で愛され続ける麒麟山酒造は、国内だけでなく、いまや世界にも認められるほどの酒蔵です。まずは麒麟山ならではのこだわり“辛口”を味わってみませんか?

●SHOP INFO

店名:麒麟山酒造

住:新潟県東蒲原郡阿賀町津川46
見学:年1回(「つがわ狐の嫁入り行列」開催時)
ホームページ:http://www.kirinzan.co.jp/

●著者プロフィール

取材・文/今西絢美

編集プロダクション「ゴーズ」所属。デジタル製品やアプリなどIT関係の記事を執筆するかたわら、“おいしいものナビゲーター”として食にまつわる記事も執筆中。旅先でその土地ならではのローカルフードを探すのが好き。