日本酒ファン必見!古酒・熟成酒専門店『いにしえ酒店』に行ってきた【後編】

日本酒ファン必見!古酒・熟成酒専門店『いにしえ酒店』に行ってきた【後編】
食楽web

 日本酒は「新酒が美味しい」という信仰に近い幻想のためか、「出来立て、搾りたて、新米仕立て」など、ことさらにフレッシュ感がアピールされる傾向にある。
 しかし、「日本酒はワインと一緒で醸造酒。寝かすほど美味しくなるものです」と『いにしえ酒店』の店主・薬師大幸さんは言う。

「冬に作った酒を春~夏に寝かして、秋に出荷するものを『ひやおろし、秋あがり』と言います。いずれもひと夏越すことで丸みのある旨みとまろやかな口当たりになった、搾りたての新酒とは違った熟成感を楽しんでいただけるお酒です」

 薬師さん曰く、日本酒を熟成させる=基本的には味を良くすることであり、旨味を敏感に感じ取れる日本人の昔ながらの知恵なのだそうだ。

 確かに、日本酒の歴史を調べてみても、熟成させた日本酒のほうが珍重されてきたようだ。江戸時代の書物『訓蒙(くんもう)要言故事』には、「古酒味厚くして身体上下共にうるおうて酔う。新酒味薄し、頭上ばかり酔って下も寂なり」と記されており、古酒(熟成酒)は味わい深く、からだ全体が潤うように酔えるが、新酒は味が薄くて酔うのは頭ばかりなり、というのである。

古酒・熟成酒は投資の対象にも?

 たとえば地方の居酒屋で出会った地酒新酒。「これはうまい!」と喜んで買って帰ったその酒が、家で飲んでみると「あれ? どうも味が違う……」、「あんまり美味しくない……」。そんな経験をした人もいるのではないだろうか?

「『開栓後は早めにお召し上がりください』と表記しているお酒もありますが、日本酒に賞味期限はありませんから開栓しても急いで飲む必要はなく、むしろ、少し寝かしておいて飲むほうが美味しいんです。そのことに気づいている人は、新酒を買っても時間を置いてから、いい頃合いをみて飲むことが多いんですよ」

 とくに古酒・熟成酒の価値をわかっている人は、ダース買いしていく人もいるという。
「10年もの、20年ものといったお酒は今、作れませんから、確実に味も価値も上がります。今、投資するなら日本酒だと言って、自宅に数百本の熟成酒を置いているという人もいるんですよ」

 というわけで、今買っておくべきイチオシの古酒を紹介してもらった。