噂のシドニーイタリアンが初上陸。シェフイチオシの絶品料理とワインの相性は?

Fratelli Paradiso

食楽web

 5月8日、表参道に初上陸したイタリアン「Fratelli Paradiso(フラテリパラディソ)」。シドニー本店はいつも満員、同地の食文化を牽引し続けてきたその店が日本にオープンすると聞き、食楽WEBでは開店1ヶ月前に、ジャパン・エグゼクティブシェフ・中安俊之さんにお話を聞いて、その実力、魅力、楽しみ方を紹介した。しかし、味も空間も未体験。そこで、今回は、中安シェフのイチオシの料理とワイン、そしてフラテリの空気を味わうべく開店ホヤホヤの店に向かった。

ワイン初心者でも感激する料理とのマリアージュ

ワイン初心者でも感激する料理とのマリアージュ

 表参道ヒルズ3Fに到着すると、真っ黒な壁面にワインボトルから握りこぶしが飛び出ているイラスト、「LOTTA CONTINUA」(イタリア語で、ネバー・ギブ・アップの意味)の手書き文字に出迎えられた。いきなり、力強いスローガンだ。しかし、ここで面食らっている場合ではない。1ヶ月前から待ちに待ち、もはや期待が膨らみすぎ、中安シェフが「味わえるのはフラテリだけ!」と言っていたあの「プロシュート&モッツァレラ」を絶対に食べたいのである。

 と、ひとり悶絶していたら、その料理はあっさりと目の前に登場した。

プロシュート&モッツァレラ 2200円

プロシュート&モッツァレラ 2200円

 まるで “赤ちゃんのほっぺ”のような薄いピンク色の伊・ペルージャ・ノルチャ産の12ヵ月間熟成・プロシュート。そして、つるんとした若いむきたての若肌のようなカンパーニャ州の水牛のモッツァレラ。そのルックスで、もう!たまらない。とにかく、ハムでチーズを包み、鼻を近づけ、唇に当て、じっくりと味わうことにした。絹のような柔らかな感触、熟成の芳香。飲み込むことすら惜しい、「儚さ」を感じる味わいなのである。

マンツォー二・ビアンコ・フォンタナサンタ 2014/フォラドリ

マンツォー二・ビアンコ・フォンタナサンタ 2014/フォラドリ

 と、そこへ。この料理にピッタリだというナチュールワイン「マンツォー二・ビアンコ・フォンタナサンタ 2014/」(白)をセレクトしてくれたソムリエ氏。曰く「イタリア・トレンティーノのビオディナミの先駆者エリザベッタ・フォラドリのワインです。トレントの丘の土壌から生まれる個性的な品種を大切にするために何十年もかけて土壌改良をし、その情熱と力強さと繊細さを兼ね備えた個性的なワインを造る生産者です。ちなみにエリザベッタはとても美しい人で、その姿が浮かぶようなワインなんです(笑)」とのこと。美人という情報はどうなのかね……、と訝しみながらも、ひと口。理屈抜きでプロシュートの繊細な味わいにマッチし、これまた感動。

 続いて、2品目に供されたのは、シドニー本店姉妹店のワインバー「10 Wikkiam Street」の人気ナンバー1メニュー「ボッタルガクリーム プレッツェル」だ。ボッタルガとはボラやマグロの卵巣を塩漬けし乾燥させた、いわゆるカラスミのこと。

ボッタルガクリーム プレッツェル 1700円

ボッタルガクリーム プレッツェル 1700円

 これは口の中でふんわりとろけるようなクリーミーさだが、その製法を聞くと「水に浸したパンと、ボッタルガのスライス、燻製オイルを、サーモミックスでゆっくりペースト状にしたもの」だというから驚く。中央のくぼみにオリーブオイル。そして、ヒマワリの種やケシの実など5種類のシードがびっしりと表面を覆ったソフトプレッツェルをちぎり、クリームとオイルをかきまぜるようにたっぷりつけて味わう。濃厚なコクで、先の「美しい女性醸造家の白ワイン」の繊細な酸味によく合う。きっとエレガントな女性なのだろうと勝手に思い描いてしまう。

流行のオレンジワインを初体験

 さらにソムリエ氏のワインストーリーに酔いしれていたら、今度は、オレンジワインを勧められた。

 恥ずかしながら、オレンジワインは未経験だったが、ソムリエ氏の説明によると、オレンジワインは、オレンジで作ったワインではなく、赤白同様、ブドウで作るワインのこと。白ブドウを使い、赤ワインの製法で、ブドウの皮や種を長時間漬け込み、そのうま味や渋み、樽の風味を味わえる。さらに、オレンジワインは、魚や肉など相性の幅が広いのが特徴なのだとか。

 セレクトしてくれたのは、有機農法で有名な「ラ・ジオネストラ」が作るオレンジワイン「Chioccia Vino Bianco」だ。美しいあんず色で、果実の甘酸っぱい香りがして、不思議と懐かしさがこみあげてきた。このワイン、本店のオーナーの一人Giovanni Paradiso氏は「土の香りがして元気になる」と評しているそうだ。

 この後サーブされたフラテリの代表メニュー「パスタスカンピ」との相性も最高だった。ちなみに、同店のパスタはすべて手打ちで、スカンピのパスタは全粒粉のもっちりしたロングパスタである。

オレンジワインのChioccia Vino Bianco/ラ・ジネストラ2013

オレンジワインのChioccia Vino Bianco/ラ・ジネストラ2013

パスタ スカンピ 2500円

パスタ スカンピ 2500円

 そして、いよいよメインディッシュの「ドライエイジングビーフ」が登場。30日間、氷温室で丁寧にドライエイジングされたオージー産ビーフを使用し、周りにカリッと焼き目をつけた、熟成香漂うローストビーフのような柔らかなレアのお肉。それには有機栽培の赤ワイン「ヴィッラ・パーチナ」を紹介された。イタリアのキャンティ地方南東部にあるワイナリーで、「完璧なブドウが完璧な醗酵をし、木樽での熟成さえも必要ないと判断した年にのみ生産される、酸化防止剤完全無添加ワイン」と希少性がうかがわれる。適度なスパイシー感と厚みのある完熟果実味が特徴で、旨みの濃いビーフとの相性が素晴らしかった。

ドライエイジングビーフ4500円

ドライエイジングビーフ4500円

VILLA PACINA 2013

VILLA PACINA 2013

もっと食を楽しむ無限のフィールドへ。

 前菜からメインまで丁寧に説明してもらい、最後に、古典レシピを再現しているというティラミスの甘み、苦味を味わいながら、ふと思う。この店では、ワインや食材、料理について、初心者に対しても一つひとつのストーリーや作り手の情熱を丁寧に教えてくれるし、もし全部を理解できなくても、その情景を思い巡らしながら味わうことができる。だから「食」の楽しみは自分勝手に無限に広がるのだ。入り口に描いてあった「ネバー・ギブ・アップ」という文字は、フラテリのスローガンだと推察するが、「諦めない」という解釈ではなく、「食にはもっと先のフィールドがある」という意味に思えた。う~ん、期待以上のシドニーイタリアン。次はどんなワインと料理を食べようか。

ティラミス900円

ティラミス900円

FRATELLI PARADISO(フラテリパラディソ)

●SHOP INFO

店名:FRATELLI PARADISO(フラテリパラディソ)

住:東京都渋谷区神宮前4-12-10表参道ヒルズ3F
TEL:03-3408-0800
営:月~土11:00~23:00 (Food LO:22:00、barfood Drink LO22:30)、日11:00~22:30 (Food LO:21:30、barfood Drink LO22:00)