日本酒を深く楽しむ「燗酒」の名店【3】立石「丸忠かまぼこ店」

日本酒を深く楽しむ「燗酒」の名店【3】立石「丸忠かまぼこ店」
「おでん盛り合わせ」。おでんは単品で頼むが、盛り合わせといえばみつくろってくれる。白滝、ちくわぶ各100円、カレーボール150円、シュウマイ巻200円、つぶ貝350円など | 食楽web

温度帯を変えて楽しめる日本酒は変幻自在の酒である。大人しく平凡と思われた酒が、お燗の名手の手にかかれば一気に別物に変身する。その奇跡を味わいにお燗の名店へいざ!

下町人情が交差する立石で
おでんとキレのいい燗酒を

「燗でお願いします」と注文が入ると、西村さんはまず一升瓶を儀式のようにクイクイっと上下にひっくり返した。何をしているのか聞いてみると、瓶内の酒の味を均一にするためだという。

 お燗はチロリで一気に温度を上げ、上がり切ったらいったん出して休ませる。程よき具合になったところでチロリのままお客さんに出す。一見すると乱暴なようだが、西村さんのお燗は酒にしなやかな広がりがあり、キレがいい。

「早くつけないとダメなんです。うちのお客さんは待てない人が多いから」と苦笑い。

 酒好きに愛される「丸忠かまぼこ店」は、立石商店街にある蒲鉾屋が営む居酒屋で、名物は蒲鉾店の女将が仕込むおでん。出汁の香り漂う薄味のおでんは汁だけで燗酒が飲める危険なアイテムだ。

 2015年に「二毛作」から名前が変わったことは記憶に新しいが、以前と変わらず西村さんの燗酒を求めて常連が集っている。午後2時に開店すると、瞬く間に満席となる昼呑み天国だ。

日本酒は常温保存。お燗は高めの温度で60℃以上につける。余熱も計算に入れて狙った温度の少し手前で出して、一度休ませるのがポイント。
日本酒は常温保存。お燗は高めの温度で60℃以上につける。余熱も計算に入れて狙った温度の少し手前で出して、一度休ませるのがポイント。

●SHOP INFO

丸忠かまぼこ店

店名:丸忠かまぼこ店

住:東京都葛飾区立石1-19-2
TEL:03-3696-6788
営:14:00~22:00 日・祝14:00~21:00
休:木曜、第3水曜休
予算/2,000円~ 個室/なし カード/不可

(撮影◎貝塚 隆 文◎岡本ジュン)