日本酒を深く楽しむ「燗酒」の名店【2】西荻窪「善知鳥」

日本酒を深く楽しむ「燗酒」の名店【2】西荻窪「善知鳥」
旬に作り置きするという「赤ホヤ塩辛」800円、ご主人の出身地・青森の郷土の味、鰊の麹漬け「切り込み」600円は、完成までに約3週間かかる | 食楽web

温度帯を変えて楽しめる日本酒は変幻自在の酒である。大人しく平凡と思われた酒が、お燗の名手の手にかかれば一気に別物に変身する。その奇跡を味わいにお燗の名店へいざ!

丹精込めた粋な酒肴と
魂のあるお燗妙技に遊ぶ

 阿佐ヶ谷にあった伝説の燗酒の店「善知鳥」が西荻窪に復活した。

「善知鳥のお燗」と日本酒好きに慕われる、店主の今悟さんの燗酒はまさに離れ業である。陶器の鍋に沸かした湯の中に徳利をポチャリとつけて、じっと酒の声に耳を傾ける。温度計は使わず、時折り徳利のお尻を触って温度を確かめるのみにとどめる。

 ここでは同じ酒をお燗違いで飲み比べるのが楽しい。最初はスタンダードなお燗、次は徳利を水平回転させ、酸味を立たせてキレを良くする。空気と混ぜてふっくらとさせるにはデキャンタージュのように上から酒を落とす。人呼んで「お燗たーじゅ」だ。〆には苦みを立てて満足感をもたらす。お燗にこれだけのバリエーションがあるとは思ってもみなかった。

 アテはおでんと自家製珍味。珍味は手間のかかるものが多く、仕込みに何週間もかけることもある。

 魔法のようなお燗技で花開いた日本酒と珠玉のアテ。この組み合わせは最高の大人の遊びだ。

青森の焼き干しで出汁を取るという「青森おでん」800円。大角天(さつまあげ)、角こんにゃく、根曲りだけ、ぼたんちくわ、大根などが入り、生姜味噌で食べる。薄味で日本酒にもよく合う。
青森の焼き干しで出汁を取るという「青森おでん」800円。大角天(さつまあげ)、角こんにゃく、根曲りだけ、ぼたんちくわ、大根などが入り、生姜味噌で食べる。薄味で日本酒にもよく合う。

●SHOP INFO

善知鳥 うとう

店名:善知鳥 うとう

住:東京都杉並区西荻北3-31-10 小西ビル201
TEL:03-3399-1890
営:17:00~22:30(LO)
休:日・祝日休
予算/4,000円前後 個室/なし カード/不可

(撮影◎貝塚 隆 文◎岡本ジュン)