日本酒を深く楽しむ「燗酒」の名店【1】湯島「燗酒嘉肴 壺中」

日本酒を深く楽しむ「燗酒」の名店【1】湯島「燗酒嘉肴 壺中」
湯煎の温度を確認しつつじんわりと温度を上げる。どっしりした酒は高温に上げてから、少し温度を下げて落ち着かせるなど、日本酒の個性を引き出している。 | 食楽web

温度帯を変えて楽しめる日本酒は変幻自在の酒である。大人しく平凡と思われた酒が、お燗の名手の手にかかれば一気に別物に変身する。その奇跡を味わいにお燗の名店へいざ!

密やかな場所で花開く
研ぎ澄まされたお燗の時間

 茶室のように静謐な佇まいの中で、お茶をたてるように、お燗番の伊藤理絵さんが優雅にお燗をつける。湯島にある「壺中」は、独特の気配に満ちている。

 伊藤さんのお燗はとにかくゆっくり、優しく温度を上げていく。

 どこまで上げるかはその日の酒のコンディション、酒肴との関係によってもまちまち。竹鶴は輪郭をしっかり出すように、玉櫻は旨みをじんわり優しく出すように、と酒の性質によっても変わる。重要なのは湯煎するお湯の温度で、お燗器にも温度計を差し入れている。

 お燗する日本酒は竹鶴や睡龍など数種類に絞り込んでいるが、伊藤さんはその条件を「米や酵母の潜在能力を最大限引き出し、発酵させきったお酒」と言い表す。 

 そんなお酒に合わせる酒肴はシンプルで上質なもの。お腹の虫を養うという京ことば“むしやしない”と書かれた欄には小腹を満たす料理も用意されていた。

 研ぎ澄まされた空間で最上の燗酒でゆるりと過ごす。そこには一流のバーに通じる愉悦がある。

基本の燗酒はタイプの違う「睡龍」、「竹鶴」、「玉櫻」。それぞれの酒の個性をより味わえるように、提供する酒器を変えている
基本の燗酒はタイプの違う「睡龍」、「竹鶴」、「玉櫻」。それぞれの酒の個性をより味わえるように、提供する酒器を変えている

●SHOP INFO

燗酒嘉肴 壺中 かんざけかこう こちゅう

店名:燗酒嘉肴 壺中 かんざけかこう こちゅう

住:東京都文京区湯島2-31-25太陽ビル1F
TEL:非公開
営:16:30~22:30(21:30LO)
休:日・月曜休
予算/5,000円~ 個室/なし カード/不可

(撮影◎貝塚 隆 文◎岡本ジュン)